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2014/03/16 20:39:31
初版 2013/03/12

Marilyn vos Savant の誤りを証明したつもりの人たち

 このページの内容は
ドナルド・グランバーグ著 「モンティ・ホール・ジレンマ ‐変えるべきか 変えざるべきか‐」
に書かれている内容を元にしています。


Marilyn vos Savant の答えに対して数多くの博士たちや数学教授たちから送られた反論は、 もっと勉強しなさいと彼女を諭すレベルから、 PARADE 誌のコラム "Ask Marilyn" を絶筆せよとするもの、 果ては彼女にバカにされた教授たちは訴訟を起こすべきだとするレベルまで様々であるが、 下記の点で一致している。 しかし数学教授の中には Marilyn vos Savant の答えの誤りを証明したつもりの人もいる。
その証明をよく見ると、ホストが当り扉を開けてゲームが流れる可能性のあるゲームを論じていたりする。

一方、数学教授ではなさそうであるが、競馬などに置き換えて Marilyn vos Savant の答えの誤りを証明したつもりの人もいる。
その証明をよく見ると、ホストが扉を開けてから賞品を配置するようなゲームにしてしまっている。

以下は、 ドナルド・グランバーグ著 「モンティ・ホール・ジレンマ ‐変えるべきか 変えざるべきか‐」に書かれている例である。

ホストが当りを開けてしまうかも知れない問題にしてしまった人の例

Marilyn vos Savant は 1990年12月2日のPARADE誌で、三つの殻と一つのエンドウ豆を使ったゲーム(注参照)を使って説明をしている。
それに大してフロリダ州立大学の某数学教授は、 次のように彼女の誤りを証明している。

三つの殻をA, B, Cとする。
最初にエイブさんが 殻A を選んだとする。
次にベンさんが 殻B を選んだとする。
次に 殻C が持ち上げられてエンドウ豆がないことがわかったとする。
あなた(Marilyn vos Savant は 殻A に豆がある確率を変える情報が得られていないので 殻A に豆がある確率は 1/3 だとしている。
同じ論法で 殻B に豆がある確率も 1/3 でなければならないから、 ( 1/ 3 ) + ( 1 / 3 ) = 1 となって矛盾する。
よってあなたの論法は誤りである。

【注1】
元来 "Three Shells Game" とは胡桃の殻を使ったイカサマ博打や手品を表す言葉なので、Marilyn vos Savant が使った "shell game" という言葉も胡桃の殻を使ったゲームを意味しているだろう。
【注2】
2013/08/17 にこの箇所を追加しました。
Marilyn vos Savant は 1990年12月2日のPARADE誌で、三つの殻と一つのエンドウ豆による説明に続けて、扉に対する賞品の配置のパターン分類表によって非条件付確率の問題設定での説明をしているが、その表を数学教授が真面目に見たかどうかは不明である。

数学教授の反論の興味深い点

Marilyn vos Savant の説の誤りを数学的に証明しようとしている点が珍しい。 背理法を使っている点も特徴である。
普通は残った扉に賞品がある確率が等しいことを述べるにとどまっている。
残った殻に豆がある確率が等しいことを証明していないのは、証明するまでもないと思っているのだろう。

Marilyn vos Savant の誤りを指摘する上でベンさんまで出て来る必要性がない。
不思議である。

ベンさんを出したために、持ち上げる殻が一つに限定されてしまい、 豆のある殻が持ち上げられてゲームが流れることもあるという設定になってしまっている。
不思議である。

そういう設定なら彼の証明は正しい。
しかし、豆のある殻が持ち上げられることもあるという風に問題を曲解しているとも思えない。
Marilyn vos Savant は殻のゲームを例にした説明の中で、 「あなた(挑戦者)の指の下の殻に豆があってもなくても、私(ホスト)は空の殻 を持ち上げるので、あなたの殻のオッズを変えるような知識は得られない」 と説明しているからである。
不思議である。

この数学教授が Marilyn vos Savant をやり込めたい思いにかられて目がくらんだ可能性が高い。

Yahoo! 知恵袋で見かけた類似の勘違い

Yahoo! 知恵袋に出された質問の一つに、類似の勘違いを見ることができた。
そこでは、次のような設定にしていた。 フロリダ州立大学の教授は当たりを開けてしまうかも知れない問題に変えてしまったが、この質問者は挑戦者の扉を開けてしまうかも知れない問題に変えてしまっている。

質問者は上のような設定で、残った二人の挑戦者それぞれから見て、もう一人の当たる確率が 2/3 になるので、確率の総和が 1 を超えていまうと悩んでいた。

この質問者とフロリダ州立大学の教授の例を並べてみると、 数学力の高低と関係なく、 このような勘違いを起こす認知メカニズムがあるのだろう。
ホストの行動ルール、すなわち 「尤度」 の無視という原理が働いでいるのかも知れない。

ちなみに、上記の質問に対するベストアンサーは、尤度に着目して説明していた。

これから発生する現象の確率ととらえて反論した人の例

ワシントン州立大学機会工学部の人の場合次のように反論している。

3人の走者が出場する100 m 競走を考える。
誰が一着になるか当てるように言われた私は番号1の走者を選んだ。
そうしたら番号3の走者が走れなくなった。
あなた(Marilyn vos Savant)の答えに基づくと、番号2の走者に選択を変えた方がよいことになってしまう

サウスカロライナ州グリーの人の場合次のように反論している。

3頭の馬による1マイルレースを考える。
途中で3番の馬が50フート離されたとする。
1番の馬と2番の馬の勝つ確率は等しい。

モンティ・ホール問題が彼らが考えるような問題だとしたら

モンティ・ホール問題が彼らが考えるような問題だとしたら、次のような問題文になってしまう。

ゲーム番組にあなたが出演していて、三つの扉のどれかを選択できると仮定してください。
三つの扉は今は全部開いています。
ステージ上には自動車1台と2頭のヤギが用意されています。
あなたは一つの扉、たとえば扉1を選び、 ホストは扉1と扉2を閉めて別の扉、たとえば扉3を開けたままにします。
自動車とヤギ達がステージの裏に入ります。
彼はあなたに言います。「これから賞品を扉の中に置きます」
開いている扉にはヤギが置かれました。 自動車がどこに置かれたかはわかりません。
彼はあなたに言います。「扉2にしたいですか?」
選択を変える方があなたにとって有利でしょうか?

Marilyn vos Savant の誤りを証明しようとする人の思考パターン

上記のような反論をした人たちの思考パターンは次のようになっているのだろう。

2013/08/17 にこの表を修正しました。
第1段階
日常の確率概念で考えて確率を錯覚する。
      
第2段階
数学の確率概念での説明を聞いても納得できない。
もしくは、Marilyn vos Savant の説明は数学になっていないと高をくくってしまう。
      
第3段階
数学の確率概念での説明は誤りだと勘違いする。
もしくは、まじめに説明を読まない。
      
第4段階
日常の確率概念で考えた確率を正当化するために問題の言い換えを試みる。
      
第5段階
上記のような反論に行き着く。

第1段階や第2段階は知能レベルによらず誰でも体験することである。

第3段階に進む人の割合については心理学者による実験も行われていなそうなので、よくわからないが、"Ask Marilyn" での論争の場合、次のような要因があるため、Marilyn vos Savant の説明を誤りだと錯覚する人が多くなったのだろう。 第4段階以降に進んだ人は少なそうである。
教授や博士達から Marilyn vos Savant への反論の大部分が、残った扉や殻が当りである確率が等しいことは説明するまでもないと勘違いしているからである。

第4段階以降に進んだ人は、Marilyn vos Savant の説明を正確に理解しない上に、問題の言い換えにまで手をつけたため、まったく別の問題を論じていることに気付かないで、Marilyn vos Savant の誤りを証明したと錯覚したのだろう。



参考文献

用語解説



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