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2013/08/18 14:36:41

確率の錯覚に共通の原理はあるか

モンティ・ホール問題の確率の錯覚とマンモグラフィー検査の確率の錯覚のちがい

マンモグラフィーなどの癌検査では、「癌であれば何パーセントの率で見つけることができます」といった説明を受けることがあっても、「陽性になった場合に実際に癌である確率は何パーセントです」といった説明を受けることはまれである。(少なくとも 2010年ごろの日本ではそうだろう)
そのため、検査で陽性になった人は高い確率で癌になっていると心配するが、それは錯覚である。

マンモグラフィー検査の錯覚とモンティ・ホール問題の錯覚との間には次のような違いがある。
事例      錯覚現象          尤度の明示    
の有無
    錯覚の内容         錯覚の名称    
市川 伸一, 下條 信輔. (2010).による
マンモグラフィー検査 癌に掛かっているときに検査結果が陽性になる確率を
陽性になったときに癌に掛かっている確率と
錯覚する。
あり
癌に掛かっている場合と掛かっていない場合のそれぞれについて、陽性になる確率と陰性になる確率が示される。
癌に掛かっているという条件での陽性や陰性になる確率を事後確率と錯覚する。 事前確率の無視(neglect of prior probability)
基準率錯誤(base rate fallacy)
モンティ・ホール問題 三つの扉が当たりである確率が等しかったから、
二つだけ残ったときにも当りである確率は等しいと
錯覚する。
ない
当り扉と挑戦者が選んだ扉の組合せごとの、各扉をホストが開ける確率は明示されていない
残った扉の確率に差異が生じるようなことは起きていないと錯覚する。 等比率の定理

同じ事後確率の錯覚でありながら、このような違いがあることに驚かされるが、次に述べるような共通点があった。

モンティ・ホール問題の確率の錯覚とマンモグラフィー検査の確率の錯覚の共通点

モンティ・ホール問題の確率の錯覚と、マンモグラフィー検査の確率の錯覚は、どちらも最後に言われた言葉にとらわれて標本空間を考えてしまって確率を錯覚しているという共通点がある。
事例 最後に言われた言葉 錯覚した標本空間
マンモグラフィー検査 検査結果が陽性だと告げた後で、次のように告げられる。

癌に掛かっているときの検査結果が
   陽性になる確率はこれこれ、
   陰性になる確率はこれこれ

その後で、気休めのように
癌に掛かっていないときに検査結果が
   陽性になる確率はこれこれ、
   陰性になる確率はこれこれ
だと告げられる。
癌に掛かっているという条件で陽性になる事象と陰性になる事象で事後の標本空間を構成する。
モンティ・ホール問題 ホストが扉3 を開けたので、
扉1 と扉2 が残った。
賞品の配置に関する標本空間からホストがあけた扉を除いたものを事後の標本空間とする。

このように、最後に与えられた情報のみから確率を判断する特性が、日常の確率判断にあるのではないだろうか?

この説を裏付けるような資料があった

「直観が誤りをおかしやすい点」 という Webページで、下記の書籍を元に、直感 (ヒューリスティク)による確率判断が誤りやすい点が分類整理されていた。

北岡 元 : 仕事に役立つインテリジェンス (PHP新書, 2008)

印南 一路 : すぐれた意思決定―判断と選択の心理学 (中公文庫, 2002)

上記の Web ページで紹介されているヒューリスティクの誤りのうち、 モンティ・ホール問題や3囚人問題に関係しそうなものを抜き出すと次のようになる。

・条件付き確率を、確率だと認識する
※私の注: マンモグラフィ検査の錯覚と似ているが同じことを言っているか不明

・利用可能な情報 (思い出しやすい情報) を過度に重視する
短期的変化にむやみに反応する最初あるいは最後の選択肢を重視する

・均一なバラツキを過度に期待する
※私の注: モンティ・ホール問題の場合、標準仮定を仮定する人が大部分であることに対応している。

これらの中では 「利用可能な情報 (思い出しやすい情報) を過度に重視する」 というヒューリステlクの誤りが、上で上げた 「モンティ・ホール問題の確率の錯覚とマンモグラフィー検査の確率の錯覚の共通点」 とよく似ている。



参考文献



用語解説



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