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2013/08/18 14:36:36

扉空間の魔力

標本空間の上で確率を考えずに、扉空間の上で確率を考えたために、 switch してもしなくても変わりがないという結論に至って悩んでいる人を Yahoo! 知恵袋などで見かけることがある。
モンティ・ホール問題慣れしている筆者ですら、それらを読むとしばらくの間悩まずには居られない。

以下はその例である。

①同じ賞品配置の2つのゲームで別個の扉が選択され同じ扉が開けられたケースでの悩み

Yahoo! 知恵袋に出された質問に次のようなものがあった。

2つのゲームが並行して行われたとする。
どのような賞品配置か不明だが同じ配置であることだけはわかっている。
片方のゲームの挑戦者は扉1を選び、もう一方のゲームの挑戦者は扉3を選んだ。
どちらのゲームでもホストは扉2を開けた。
賞品の配置が両方のゲームで同じで開けられた扉も同じなのだから扉1が当りである確率は両者で同じになる。
同様に扉3が当りである確率も両者で同じになる。
しかしモンティ・ホール問題の解答では扉1が当りである確率は前者では 1 / 3 、後者では 2 / 3 となるので矛盾する。

矛盾するように感ずるのは単一の扉空間の上で確率を考えてしまうためである。
このような扉空間の魔力から逃れて我に帰るには、標本空間 (場合分けの表) を書き出して見ればよい。
場合分けをやっている途中で、二つのゲームをばらばらに考えてはいけないことに気づくはずである。
両方のゲームでホストが同じ扉2 を開けたということが重大なポイントになっているからである。
二つのゲームを組み合わせたり、両方のゲームで賞品の配置が一致したり、挑戦者が別の扉を選んでいるのにホストが同じ扉を開けたりして通常のモンティ・ホール問題とは似ても似つかない場合分けになることに気づけば、不思議さはなくなる。
ちなみに扉1 と扉3 の対称性から、どちらが当たりである確率も 1 / 2 であることがすぐに分かるので、場合分けは途中でやめてもよい。

①´ 同じゲームに第2 の挑戦者が参加して第1 の挑戦者と別の扉を選択したケースでの悩み

①のケースで別々のゲームだったものを同一のゲームとすれば、このケースになる。
二人の挑戦者が参加するようなゲームはもはやモンティ・ホール問題ではないが、大学教授たちもそのことに気付かないで数学的に誤った結論を導き出したり、悩んだりしている。

例えば、マリリン・ヴォス・サヴァント著 「気がつかなかった数学の罠 論理思考トレーニング法」 東方雅美訳 中央経済社刊 (2002) の補遺として巻末に載っているドナルド・グランバーグ著「モンティ・ホール・ジレンマ ‐変えるべきか 変えざるべきか‐」 に出てくるフロリダ州立大学の某数学教授の場合、次のような論法で、Marilyn vos Savant の説明の誤りを証明したつもりになっている。

Marilyn vos Savant の説明が正しいとすると、 エイブさんが選んだ殻が当りの確率も、 ベンさんが選んだ殻が当りの確率も 1 / 3 になって、  それらを足すと 2 / 3 で 1 より小さくなってしまうから Marilyn vos Savant の説明は誤りだ。

大阪府立大学の電子物理工学の萱沼教授もビールを飲みながらモンティホール・ディレンマを考えていたら、同じ錯覚に陥って、 「AさんもBさんも、お互いの箱を取り替えっこしようと申し出ることになる。ありゃりゃ?」 と Web に書いている。
 
注: 萱沼教授は受けをねらってわざと 「ありゃりゃ?」 と書いたのであって、酔いが醒めてからちゃんと数学的に解決しているだろうと推察します。

これらの逸話は、大学教授であろうと一般人であろうと、数学の確率概念で確率を考えること、すなわち、場合分けを行って確率を考えることが非常に困難であることを示している。 場合分けなどしなくても確率を計算できると勘違いしてしまうのだ。

②選ばなかった2つの扉の組と、選んだ扉と開けられた扉の組を比較したときの悩み

Yahoo! 知恵袋に出された質問に次のようなものがあった。

挑戦者が選ばなかった2つの扉の組合せと、挑戦者が選んだ扉とホストが開けた扉の組あわせのどちらも、 当りかも知れない扉とハズレが確定した扉で構成されているので、有利さに差はない。
一方、switch することは前者を選ぶことであり、 switch しないことは後者を選ぶことである。
したがって、 switch してもしなくても有利さに差が無いはずであり、switch する方が有利だという通常の答えと食い違ってしまう。

2013/06/15 、2013/08/13 に、この部分を修正しました。

これを何度も読んでいると、前段の 「どちらも、当りかも知れない扉とハズレが確定した扉で構成されているので、有利さに差はない」 という部分が「挑戦者が選んだ扉と残りの扉の当たりやすさに変わりがない」 という結論を含んでいることに気づく。元々推論になっていなかったのである。
「当たりかも知れない扉」 という表現に惑わされて挑戦者が選んだ扉とホストが開け残した扉の差が見えなくなるのだろう。
このような扉空間の魔力から逃れて我に返るには標本空間の上で特定のハズレ扉が確定した範囲を考えればよい。
例えば挑戦者が扉1を選びホストが扉3を開けた場合であれば、標本空間の中の挑戦者が扉1 を選び、ホストが扉3 を開けた範囲に絞って考えると、挑戦者が選ばなかった扉2 と扉3 の組合せに賞品がある確率 (事前確率)は 1/3 で、戦者が選んだ扉1 とホストが開けた扉3 の組あわせに賞品がある確率 (事前確率)は 1/6 であることに気づいて、迷いから覚めるはずである。


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