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【主な内容】
【主な内容】
前半部分
◇ 確率の錯覚現象の例を上げている。
2013/08/18 14:36:41
American Statistician 誌上での議論
Americam Statistician に掲載されたモンティ・ホール問題に関する資料を調べていたら、次のように同じ号で誌上議論しているような様子が見えて来た。論文を投稿するときに誌上で議論することを了解すると、編集者が論争相手を選んで出版前に読ませているのかも知れない。Vol 45 (1991) のある号の場合
284~287ページ Morgan, J. P., Chaganty, N. R., Dahiya, R. C., & Doviak, M. J. (1991a).
PARADEマガジンのコラム "Ask Mrilyn" での大論争 ( 1990年9月~1991年2月 ) の後間もなくして掲載された論文である。【主な内容】
- ◇ 最初のペーに、Marilyn vos Savant の解は "wrong" だという文が何度も出てくる。
- ◇ モンティ・ホール問題を確率の問題としてとらえるとらえ方を、事象のとらえ方で分類している。
- ◇ Marilyn vos Savant は unconditional probability の観点で問題をとらえていて、 conditinal probbility の観点でとらえていないから、等確率開扉の仮定が成立する特殊な条件でしか正しくないので、彼女の solution は間違っている。
- ◇ Morgan らは統計数学の専門家なので、私の方が間違っている可能性が高いが、彼らは何を仮説事象とし何を証拠事象とするかという事象のとらえ方の違いを、標本空間の構成の違いと勘違いしているように見える。
- ◇ この論文はモンティ・ホール問題の数学的なとらえ方に種類があることを述べている文献の草分けであり、多くの文献がこの論文を参照しているのも納得できる。
(数学的なとらえ方の違いと、ゲームのルール、すなわち事前確率の設定の違いを混同しないようにしてほしい)
287~288ページ Seymann R. G. (1991).
Morgan, J. P., Chaganty, N. R., Dahiya, R. C., & Doviak, M. J. (1991a). に触発されて、確率の問題の捉え方や、確率の錯覚の原因について考察している。【主な内容】
前半部分
- ◇ 確率のパズルには問題のとらえ方で答えが違うものがあることを、Bertrands Paradox を例に述べている。
- ◇ モンティ・ホール問題を unconditional probabiliy の問題としてとらえることはゲーム理論の 1プレイヤーゲームとしてとらえることに当り、conditional probabiliy の問題としてとらえることは、ゲーム理論の 2プレイヤーゲームとしてとらえることに当るとしている。
◇ 確率の錯覚現象の例を上げている。
【私の注】
1991年には、病気診断の確率錯覚現象が統計数学界で知られていたことがわかる。
289ページ Morgan, J. P., Chaganty, N. R., Dahiya, R. C., & Doviak, M. J. (1991b).
Seymann R. G. (1991). に対して反論している。【主な内容】
- ◇ モンティ・ホール問題を conditional probabiliy の問題としてとらえることはゲーム理論の 2プレイヤーゲームとしてとらえることだという Seymann の考え方に反論している。
- ◇ そういった反論の締めくくりに、Selvin, Steve (1975b). で引用されていた Monty Hall 本人の言葉を再引用している。
Selvin (1975) reported that "Monty Hall wrote and expressed---Morgan, J. P., Chaganty, N. R., Dahiya, R. C., & Doviak, M. J. (1991b). での引用内容
that he was not 'a student of statistics problems' but 'the
big hole in your argument is that once the first box is
seen to be empty, the contestant cannot exchange his box. "
347ページ vos Savant, Marilyn (1991).
Morgan, J. P., Chaganty, N. R., Dahiya, R. C., & Doviak, M. J. (1991a). に反論している。【主な内容】
- ◇ 難しい単語ばかりで難解な文章であるが、Marilyn vos Savant が Morgan らの論文に憤慨していることだけはわかった。
- ◇ 最後の方で標準仮定を前提として議論することの正答性を述べている。
Nearly all of my critics understood the intended scenario, and few---vos Savant, Marilyn (1991).
raised questions of ambiguity. I personlly read nearly three thousand
letters ( out of the many more thousands that ultimately arraived ) and
found virtualy every reader, from university lectern to kitchen table,
insisting simply that because two options remained, the chances wer even.
この文章はモンティ・ホール問題の主要な課題である認知心理学的研究の重要な資料になるので Morgan らとの議論から離れて単独でも重要である。
347~348ページ Morgan, J. P., Chaganty, N. R., Dahiya, R. C., & Doviak, M. J. (1991c).
vos Savant, Marilyn (1991).に返答している。【主な内容】
- ◇モンティ・ホール問題の解は conditional probability の解でなければならないという考えを捨てていない。
But neither do we shy from listing the technical errors---Morgan, J. P., Chaganty, N. R., Dahiya, R. C., & Doviak, M. J. (1991c).
that she and others, including ourselves during that tempestuous first
day of debate, habe made, a perfectly legitimate function within the
venue of The American Statistician.
One May argue that the information ncsessary to use the conditional solution is not---Morgan, J. P., Chaganty, N. R., Dahiya, R. C., & Doviak, M. J. (1991c).
available to tthe player, or that given natural symmetry conditions, the
unconditional approach necessarily leads to the same result, but this
does not change the aforementioned fact.
私の注: the aforementioned fact. とは、Craig F. Whitaker さんが出した問題がconditional probablity の問題であること。
- ◇ 標準仮定を前提として議論することの正当性を主張する Marilyn vos Savant に対して、彼女自身の言葉を返している。
Take no premises for granted. If you're having trouble with a logic problem, go---Vos Svant, M., and Fleischer, L (1990). p.87
back through it and see if you're taking anything for granted. Making
assumptions is one of the places where you can get into trouble, not
just in logic problem, but in life. If you can learn to stop doing that,
it will stand you in good stead in both your professional and personallives.
- ◇ 自分たちの解は一般性があるが、Marilyn vos Savant の解にはないと述べている。
- ◇ 1990年 9月~ 1991年 2月に掛けて PARADE誌のコラム "Ask Marilyn" で議論されてから 1年もたたないうちに、対称性によって conditional probability と unconditional probability の一致を議論する統計数学者がいたというのは、さすがプロだと関心した。
- ◇ Morgan らの論文は標準仮定 のうち 等確率開扉の仮定だけが成り立たない条件に重点を置いているので、彼らの解が一般性を持っているとは言い難い。
文献
-
Morgan, J. P., Chaganty, N. R., Dahiya, R. C., & Doviak, M. J. (1991a).
"Let's Make A Deal: The player's dilemma,"
American Statistician 45: 284-287.
-
Morgan, J. P., Chaganty, N. R., Dahiya, R. C., & Doviak, M. J. (1991b).
[Let's Make a Deal: The Player's Dilemma]: Rejoinder
American Statistician 45: 289.
-
Morgan, J. P., Chaganty, N. R., Dahiya, R. C., & Doviak, M. J. (1991c).
REJOINDER TO VOS SAVANT
American Statistician 45: 347-348.
-
Seymann R. G. (1991).
Comment on Let's make a deal: The player's dilemma, American Statistician 45: 287-288.
-
vos Savant, Marilyn (1991).
MARILYN VOS SAVANT REPLY
American Statistician 45: 347.
-
Vos Svant, M., and Fleischer, L (1990). p.87
Brain Building: Excercising Yourself Smarter, New York: Bantam Books.
-
Selvin, Steve (1975b).
"On the Monty Hall problem" (letter to the editor). American Statistician 29(3): 134 (August 1975).
用語解説
-
標準仮定
モンティ・ホール問題や3囚人問題を数学的に解くためには問題文に明示的に書かれていない条件を仮定する必要がある。
標準仮定はそうした仮定の一つであり、モンティ・ホール問題の場合、次のような内容となっている。
①当たり扉はランダムかつ等確率に設定される
②ホストは挑戦者の選んだ扉を開けない
③ホストは必ず残りの扉を一枚開ける
④ホストはハズレの扉しか開けない
⑤ホストは挑戦者の選んだ扉が当たりのとき、ハズレ扉をランダムかつ等確率に選んで開ける
⑥ホストは扉を開けた後に必ずswitchの機会を挑戦者に与える
1975年に モンティ・ホール問題を発案した Steve Selvin も、
1990~1991年に PARADE誌のコラム"Ask Marilyn"で論争した人々の多くも、
標準仮定のもとに議論していた。
「標準仮定」(the standard assumptions)とは Wikipedia(英語版)の "Monty Hall problem"の記事で導入された言葉である。
3囚人問題の標準仮定は、「⑥ホストは扉を開けた後に必ずswitchの機会を挑戦者に与える」を除いたものになる。
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等確率開扉の仮定
上記の標準仮定のうち、「⑤ホストは挑戦者の選んだ扉が当たりのとき、ハズレ扉をランダムかつ等確率に選んで開ける」を
筆者は「等確率開扉の仮定」と呼ぶことにしている。
3囚人問題の場合は、「⑤看守は質問した囚人が恩赦のとき、処刑される囚人からランダムかつ等確率に選んだ囚人の名を告げる」となる。
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Bertrands Paradox
円の弦をランダムに引いた場合に内接正三角形の辺より長くなる確率が、問題のとらえ方で違って見える現象
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Bertrand' Box Problem
箪笥に三つの引き出しがあって、ひとつには金貨2枚、もう1つには金貨と銀貨1枚ずつ、最後の1つには銀貨2枚が入っている。
ランダムに引き出しを1つ開けてランダムに一枚出したら金貨だったとき、残りの一枚が金貨である確率を求める問題
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The Birthday Problem
ランダムに集めた人々の集団に同じ誕生日のカップルがいる確率を 1 /2 より大きくするには何人以上集めなければならないかを計算すると、
1年が365日もあるのに予想外に少ない人数で済むので驚く。
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