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二人の子供問題の本来の問題文は、子どもの一人の性別や二人の子供の性別構成が分かった経緯が書かれていません。
このような問題文は、条件付き確率を計算する手掛かりになる 「証拠事象」 に直接言及している 「事象型の二人の子供問題」 と呼ぶことができます。
しかし、子供を連れている X氏に出会ったというパターンのように、一人の子供の性別が分かった経緯が書かれている問題文もあります。
このような問題文は、問題文に書かれている現象から 「証拠事象」 に翻訳することを読者に要求する 「現象型の二人の子供問題」 と呼ぶことができます。
このような 「現象型の二人の子供問題」 の問題文では、スミス氏 (確率が 1/3) のようでいて実はジョウンズ氏 (確率が 1/2) だったりすることがあります。
また、二人の子供の性別構成が分かった経緯によっては、 典型的なジョウンズ氏 (確率が 1/2) のようでいて実は確率が 1/2 からずれていることもあります。
この問題文の中のスミス氏はジョウンズ氏 (確率 1/2) です。
ジョウンズ氏 (確率 1/2) です。
この家のご主人はスミス氏(確率 1/3) です。
"Ask Marilyn" で Marilyn vos Savant と読者が議論した問題文が、マリリン・ヴォス・サヴァント著 「気がつかなかった数学の罠 論理思考トレーニング法」東方雅美訳 中央経済社刊 (2002) で紹介されているので、要約すると次のようになります。
「もう一頭」 という文言があるので、この店員たちは あいまいなスミス氏の一族 です。
一人の子供の性別や二人の子供の性別構成が分かった経緯に関する叙述のある 「現象型の二人の子供問題」 に対して、どこまで詳しく分析すべきかを論じるときに参考になります。
次に、証拠事象 「二人の子供のうち、少なくとも一人は男の子である」 に合致する部分のみ取り出します。
次に、証拠事象 「上の子は女の子である」 に合致する部分のみ取り出します。
証拠事象の確認
ここで気を付けなければならないのは、
ということが証拠事象 (確率を計算する手掛かり) だということです。
「初めて」 が重要なのは、一人の子供の性別が分かる前に別の子に会っていたら、問題が成立しなくなるからです。
「道で出会った」 ことが重要なのは、出会ったのが野球場だったら男の子を連れている確率が高くなって、残りの子が女の子である確率が高くなるからです。
「X氏が連れていた子が二人の子供のうちの一人で男の子であった」 というだけ、あるいは、「その子は男の子である」 というだけでは、一人の子供の性別が分かった経緯を重視する立場から見ると証拠事象にはなりません。
補足
一人の子供の性別が分かった経緯を重視しない立場から見れば、 「その子は男の子である」 というだけで立派な証拠事象です。 一人の子供の性別が分かった経緯を重視しない立場にもそれなりの正当性があることについては、この後で論じます。
直接、事後オッズを書き下す方法で確率を計算してみる
出会った子供の性別、出会った子供の生まれ順、そして、二人の子供の性別構成を組み合わせて場合分けをする方法があります。
女の子と出会った場合などの発生しなかった証拠事象も表にすることができるので正確に分析できます。
この表の数字は確率でなく、オッズです。
「初めて会ったX氏の子供は二人の子供のうちの一人で男の子だった」 という証拠事象に含まれるオッズの和を全オッズの和で割れば、確率が求まります。
この表の数字は確率でなく、オッズです。
次に男の子に会うか、女の子に会うか、対称的であるとすると次のようになります、。
この表の数字は確率でなく、オッズです。
次に子供の性別構成について証拠事象が発生する確率が対称的であるとすると次のようになります、。
この表の数字は確率でなく、オッズです。
次に発生しなかった部分を省くと次のようになります。
この表の数字は確率でなく、オッズです。
次に仮説事象をX氏が連れていた男の子中心の表現に変えてから、事後確率を計算します。
事象型の (本来の) ジョウンズ氏の確率を計算したときの表と 「構造」 がビッタリ一致します。
この表の数字は確率でなく、オッズです。
この場合、子供が二人とも男の子である確率が 1/3 となり、ジョウンズ氏らしからぬ値となります。
直接、事後オッズを書き下す方法で確率を計算してみる
この表の数字は確率でなく、オッズです。
「鯉のぼりが掲げてあった」 という証拠事象に含まれるオッズの和を全オッズの和で割れば、確率が求まります。
この表の数字は確率でなく、オッズです。
次に、男の子の数や、年長か否かについて、対称的であるとすると次のようになります、。
この表の数字は確率でなく、オッズです。
次に発生しなかった部分を省いてから事後確率を計算します。
事象型の (本来の) スミス氏の確率を計算したときの表と 「構造」 がビッタリ一致します。
この表の数字は確率でなく、オッズです。
このようなオッズの場合、二人とも男の子である確率は4/(4+6+6) = 1/4 であるので、純粋なスミス氏 (確率 1/3) になりません。
一人の子供の性別や二人の子供の性別構成がわかった経緯を無視して考える立場もあってよさそうです。
現象型の二人の子供問題、すなわち、一人の子供の性別や二人の子供の性別構成がわかった経緯付の問題文に対して、事象型の(本来の) ジョウンズ氏やスミス氏の解法を適用している人に対して単純に 「間違っている」 と指摘するのではなく、
「基本的には合っているけれど、野球場で会った場合などでは男の子を連れている確率が高いかも知れない」 とか、
「基本的には合っているけれど、男の子だけのときより、男女混成のときの方が鯉のぼりが飾ってある確率が高いかも知れない」 とか、
述べるべきでしょう。
例えば次のようなオッズの場合、純粋な事象型のジョウンズ氏 (確率 1/2) になりません。
典型的な事象型のジョウンズ氏 (確率 1/2) のように見えても、ドラマチックに問題文が書かれていると怪しくなることがわかります。
例えば次のようなオッズの場合、純粋なスミス氏 (確率 1/3) になりません。
典型的な事象型のスミス氏 (確率 1/3) のように見えても、ドラマチックに問題文が書かれていると怪しくなることがわかります。
一人の子供の性別が分かった経緯などどうでもよくなって、生まれ順や性別を考慮した場合分けが無用に思えるからです。
しかし 「初めて会ったX氏の子供は二人の子供のうちの一人で男の子だった」 という問題文の場合、 「もう一人の子も男の子か?」 という質問と、 「二人とも男の子か?」 という質問に意味の違いはありませんでした。
というわけで、私の勘違いだと分かって一件落着と思いきや、そう話は簡単ではありません。一人の子供の性別が分かった経緯を重視しない立場から見ても、「もう一人の子も男の子か?」 という質問と、 「二人とも男の子か?」 という質問に意味の違いはないからです。
一人の子供の性別が分かった経緯を重視しないで 「生まれ順や性別を考慮した場合分けは無用だ」 とする立場も認めるべきなのでしょう。
そして、兄弟の性別構成が判明した時点でどっちの子に会ったか覚えていないような場合にはジョウンズ氏 (確率 1/2) でなくスミス氏 (確率 1/3) になると錯覚していました。
しかし、「初めて会ったX氏の子供は二人の子供のうちの一人で男の子だった」 が本当の証拠事象だと悟れば、出会った子を覚えているかどうか気にする必要はありませんでした。
子供の性別構成に関する 「事象」 を述べているようにも見え、一人の子供の性別に関する 「現象」 を述べているようにも見えるからです。
この問題について調べた Rutherford,M.D. 2010. の内容を、 別ページ 「あいまいなスミス氏の一族」 で調べました。
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2014/03/29 10:23:51
全面書き換え 2014/02/07
初版 2014/01/27
現象型の二人の子供問題
2014/02/07 に、 確率が 1/2 のようでいて、そうでないジョウンズ氏、確率が 1/3 のようでいて、そうでないスミス氏を並べて調べるために、このページを大々的に書き直しました。
それに合わせて、 「男の子ありと判明経緯付きとスミス氏」 という表題から 「子供の性別が分かった経緯付きジョウンズ氏とスミス氏」 という表題に改めました。
2014/02/09 に、子供の性別が分かった経緯付であっても性別や年の順に対称性があれば経緯の付いていない通常の問題と同型であることを中心に据えた構成に変更しました。
2014/02/16 に、 「子供の性別が分かった経緯付きジョウンズ氏とスミス氏」 という表題から 「現象型の二人の子供問題」 という表題に改めました。
それに合わせて、 「子供の性別が分かった経緯付き」 云々という表現も 「現象型の二人の子供問題の」 云々という表現に改めました。
それに合わせて、 「男の子ありと判明経緯付きとスミス氏」 という表題から 「子供の性別が分かった経緯付きジョウンズ氏とスミス氏」 という表題に改めました。
2014/02/09 に、子供の性別が分かった経緯付であっても性別や年の順に対称性があれば経緯の付いていない通常の問題と同型であることを中心に据えた構成に変更しました。
2014/02/16 に、 「子供の性別が分かった経緯付きジョウンズ氏とスミス氏」 という表題から 「現象型の二人の子供問題」 という表題に改めました。
それに合わせて、 「子供の性別が分かった経緯付き」 云々という表現も 「現象型の二人の子供問題の」 云々という表現に改めました。
二人の子供問題の本来の問題文は、子どもの一人の性別や二人の子供の性別構成が分かった経緯が書かれていません。
ジョゥンズ氏の二人の子供のうち年長の子は女の子である。 二人とも女の子である確率は?
スミス氏の二人の子供のうち少なくとも一人は男の子である。 二人とも男の子である確率は?
スミス氏の二人の子供のうち少なくとも一人は男の子である。 二人とも男の子である確率は?
このような問題文は、条件付き確率を計算する手掛かりになる 「証拠事象」 に直接言及している 「事象型の二人の子供問題」 と呼ぶことができます。
しかし、子供を連れている X氏に出会ったというパターンのように、一人の子供の性別が分かった経緯が書かれている問題文もあります。
このような問題文は、問題文に書かれている現象から 「証拠事象」 に翻訳することを読者に要求する 「現象型の二人の子供問題」 と呼ぶことができます。
このような 「現象型の二人の子供問題」 の問題文では、
また、二人の子供の性別構成が分かった経緯によっては、 典型的な
現象型の二人の子供問題の例
例1
Bar-Hillel,M. and Falk,R. 1982. の Problem 1 を要約すると次のようになります。スミス氏には子供が二人いる。
一人の少年を連れたスミス氏に、その子は彼の息子だと紹介された。
スミス氏のもう一人の子が男の子である確率は?
一人の少年を連れたスミス氏に、その子は彼の息子だと紹介された。
スミス氏のもう一人の子が男の子である確率は?
この問題文の中のスミス氏はジョウンズ氏 (確率 1/2) です。
例2
正巳さんの「正己の異論・反論」というブログの「スミス氏の息子問題 - 正己の異論・反論:So-net blog」 というページに、電話を掛けたら電話の向こうの声が男の子の声だと分かったというパターンが紹介されています。ジョウンズ氏 (確率 1/2) です。
例3
馬場正博さんの「ビジネスのための雑学知ったかぶり」というブログの 「ビジネスのための雑学知ったかぶり モンティホール問題」 というページに対する "3人目の通りすがり" さんのコメントに書かれていた問題文です。二人がいる家の玄関先に鯉のぼりが飾ってあった。
この家のご主人はスミス氏(確率 1/3) です。
例4
2014/03/29 にこの項を加えました。"Ask Marilyn" で Marilyn vos Savant と読者が議論した問題文が、マリリン・ヴォス・サヴァント著 「気がつかなかった数学の罠 論理思考トレーニング法」
ペットショップにピーグル犬の子犬が二頭いるが店員は彼らの性別を知らない。
あなたはペットショップの店員に 「オスの子犬を一頭だけ欲しい」 と伝えた。
その店員が、子犬たちを風呂に入れている別の店員に 「少なくともどちらかはオスか?」 と電話で聞いた。
(私の注:アメリカは何でも広いからペットショップに内線電話があってもおかしくない)
その店員は電話を切ってからあなたに 「一頭はオスです」 と伝えた。
もう一頭がオスである確率はどのくらいでしょうか?
あなたはペットショップの店員に 「オスの子犬を一頭だけ欲しい」 と伝えた。
その店員が、子犬たちを風呂に入れている別の店員に 「少なくともどちらかはオスか?」 と電話で聞いた。
(私の注:アメリカは何でも広いからペットショップに内線電話があってもおかしくない)
その店員は電話を切ってからあなたに 「一頭はオスです」 と伝えた。
もう一頭がオスである確率はどのくらいでしょうか?
「もう一頭」 という文言があるので、この店員たちは あいまいなスミス氏の一族 です。
現象型の二人の子供問題がジョウンズ氏 (確率 1/2) かスミス氏 (確率 1/3) か判別する方法
Rutherford,M.D. 2010. で提唱されている判別方法を要約すると次のようになります。- 子供の性別構成に関する叙述が 「子供個人のレベル」 の叙述の場合は確率 1/2 である。
- 子供の性別構成に関する叙述が 「家庭全体のレベル」 の叙述の場合は確率 1/3 である。
- 一人の子供の性別を述べている場合はジョウンズ氏 (確率 1/2) である。
- 二人の子供の性別構成を述べている場合はスミス氏 (確率 1/3) である。
事象型の二人の子供問題、すなわち本来のジョウンズ氏やスミス氏の確率計算方法のおさらい
現象型の二人の子供問題の確率計算方法を調べる前に、事象型の二人の子供問題、すなわち本来のジョウンズ氏やスミス氏の確率計算方法を整理します。一人の子供の性別や二人の子供の性別構成が分かった経緯に関する叙述のある 「現象型の二人の子供問題」 に対して、どこまで詳しく分析すべきかを論じるときに参考になります。
事象型の (本来の) スミス氏の確率計算
まず、標本空間を排他事象に分割して、それぞれの事前確率を求めます。
|
|
|
|
|
---|---|---|---|---|
男の子もいる | 1/4 | 1/4 | 1/4 | 0 |
女の子のみである | 0 | 0 | 0 | 1/4 |
次に、証拠事象 「二人の子供のうち、少なくとも一人は男の子である」 に合致する部分のみ取り出します。
|
|
|
|
---|---|---|---|
証拠事象 |
1/4 | 1/4 | 1/4 |
事後確率 | 1/3 | 1/3 | 1/3 |
事象型の (本来の) ジョウンズ氏の確率計算
まず、標本空間を排他事象に分割して、それぞれの事前確率を求めます。
|
|
|
|
|
---|---|---|---|---|
上の子は 女の子 |
0 | 0 | 1/4 | 1/4 |
上の子は 男の子 |
1/4 | 1/4 | 0 | 0 |
次に、証拠事象 「上の子は女の子である」 に合致する部分のみ取り出します。
|
|
|
---|---|---|
証拠事象 |
1/4 | 1/4 |
事後確率 | 1/2 | 1/2 |
一人の子供の性別に関する叙述がある現象型の二人の子供問題の確率計算方法
一人の子供の性別に関する叙述がある現象型の確率計算の一般論
男の子を連れている X氏の場合を例に、確率の計算方法を考えてみます。証拠事象の確認
ここで気を付けなければならないのは、
初めてX氏の子供と出会ったのは、二人の子供のうちの男の子を連れているX氏に道で会ったときだった
ということが証拠事象 (確率を計算する手掛かり) だということです。
「初めて」 が重要なのは、一人の子供の性別が分かる前に別の子に会っていたら、問題が成立しなくなるからです。
「道で出会った」 ことが重要なのは、出会ったのが野球場だったら男の子を連れている確率が高くなって、残りの子が女の子である確率が高くなるからです。
「X氏が連れていた子が二人の子供のうちの一人で男の子であった」 というだけ、あるいは、「その子は男の子である」 というだけでは、一人の子供の性別が分かった経緯を重視する立場から見ると証拠事象にはなりません。
補足
一人の子供の性別が分かった経緯を重視しない立場から見れば、 「その子は男の子である」 というだけで立派な証拠事象です。 一人の子供の性別が分かった経緯を重視しない立場にもそれなりの正当性があることについては、この後で論じます。
直接、事後オッズを書き下す方法で確率を計算してみる
出会った子供の性別、出会った子供の生まれ順、そして、二人の子供の性別構成を組み合わせて場合分けをする方法があります。
女の子と出会った場合などの発生しなかった証拠事象も表にすることができるので正確に分析できます。
|
|
|
|
|
---|---|---|---|---|
|
a | c | 0 | 0 |
|
b | 0 | e | 0 |
|
0 | 0 | f | g |
|
0 | d | 0 | h |
「初めて会ったX氏の子供は二人の子供のうちの一人で男の子だった」 という証拠事象に含まれるオッズの和を全オッズの和で割れば、確率が求まります。
最大級の対称性がある場合の確率計算
まず、上の子に会うか、下の子に会うか、対称的であるとすると次のようになります、。
|
|
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|
|
---|---|---|---|---|
|
a | b | c | 0 |
|
0 | b | c | d |
次に男の子に会うか、女の子に会うか、対称的であるとすると次のようになります、。
|
|
|
|
|
---|---|---|---|---|
|
a | b | b | 0 |
|
0 | b | b | d |
次に子供の性別構成について証拠事象が発生する確率が対称的であるとすると次のようになります、。
|
|
|
|
|
---|---|---|---|---|
|
2b | b | b | 0 |
|
0 | b | b | 2b |
次に発生しなかった部分を省くと次のようになります。
|
|
|
|
---|---|---|---|
証拠事象 に合致する部分の事前オッズ |
2b | b | b |
次に仮説事象をX氏が連れていた男の子中心の表現に変えてから、事後確率を計算します。
男の子に 男きょうだいあり |
男の子に 女きょうだいあり |
|
---|---|---|
証拠事象 に合致する部分の事前オッズ |
2b | 2b |
事後確率 | 1/2 | 1/2 |
事象型の (本来の) ジョウンズ氏の確率を計算したときの表と 「構造」 がビッタリ一致します。
対称性が崩れている場合の確率計算
例えば X氏が男の子しか連れて歩かない場合、兄と弟で確率を奪いあうため、純粋なジョウンズ氏 (確率 1/2) になりません。
|
|
|
|
|
---|---|---|---|---|
|
1 | 2 | 0 | 0 |
|
1 | 0 | 2 | 0 |
|
0 | 0 | 0 | 0 |
|
0 | 0 | 0 | 0 |
この場合、子供が二人とも男の子である確率が 1/3 となり、ジョウンズ氏らしからぬ値となります。
二人の子供の性別構成に関する叙述のある現象型の二人の子供問題の確率計算方法
二人の子供の性別構成に関する叙述のある現象型の確率計算の一般論
鯉のぼりを掲げた X氏の場合を例に、確率の計算方法を考えてみます。直接、事後オッズを書き下す方法で確率を計算してみる
|
|
|
|
|
---|---|---|---|---|
|
a | c | e | 0 |
|
b | d | f | 0 |
「鯉のぼりが掲げてあった」 という証拠事象に含まれるオッズの和を全オッズの和で割れば、確率が求まります。
最大級の対称性がある場合の確率計算
まず、鯉のぼりに気づくかどうか、対称的であるとすると次のようになります。
|
|
|
|
|
---|---|---|---|---|
|
a | b | c | 0 |
|
a | b | c | 0 |
次に、男の子の数や、年長か否かについて、対称的であるとすると次のようになります、。
|
|
|
|
|
---|---|---|---|---|
|
a | a | a | 0 |
|
a | a | a | 0 |
次に発生しなかった部分を省いてから事後確率を計算します。
|
|
|
|
---|---|---|---|
証拠事象 「鯉のぼりが掲げてあった」 に合致する部分の事前オッズ |
a | a | a |
事後確率 | 1/3 | 1/3 | 1/3 |
事象型の (本来の) スミス氏の確率を計算したときの表と 「構造」 がビッタリ一致します。
対称性が崩れている場合の確率計算
鯉のぼりを飾るのは、雛飾りとセットの行動だとすると、次のようなオッズになるかも知れません。
|
|
|
|
|
---|---|---|---|---|
|
4 | 6 | 6 | 0 |
|
6 | 4 | 4 | 10 |
このようなオッズの場合、二人とも男の子である確率は
現象型の二人の子供問題に対して、一人の子供の性別や二人の子どもの性別構成が分かった経緯を無視する立場はどのくらい正当か
現象型の二人の子供問題、すなわち、一人の子供の性別や二人の子供の性別構成がわかった経緯が書かれている問題文であっても、最大限に対称性を仮定すると、それぞれ事象型の (本来の) ジョウンズ氏 (確率 1/2) やスミス氏 (確率 1/3) に一致することがわかりました。一人の子供の性別や二人の子供の性別構成がわかった経緯を無視して考える立場もあってよさそうです。
現象型の二人の子供問題、すなわち、一人の子供の性別や二人の子供の性別構成がわかった経緯付の問題文に対して、事象型の(本来の) ジョウンズ氏やスミス氏の解法を適用している人に対して単純に 「間違っている」 と指摘するのではなく、
「基本的には合っているけれど、野球場で会った場合などでは男の子を連れている確率が高いかも知れない」 とか、
「基本的には合っているけれど、男の子だけのときより、男女混成のときの方が鯉のぼりが飾ってある確率が高いかも知れない」 とか、
述べるべきでしょう。
一読すると 「事象型」 に思える問題文を加工して、少しでもドラマ性を加味すると 「現象型」 に化ける
質問に答えるジョウンズ氏のケース
Rosenhouse, Jason.(2009). に書かれていた内容をヒントに思いつきました。ジョウンズ氏に 「子供はいるか」 と聞いたら 「二人いる」 と答えた。
次に 「女の子はいるか」 と聞いたら 「上の子は女の子だ」 と答えた。
女の子二人である確率は?
次に 「女の子はいるか」 と聞いたら 「上の子は女の子だ」 と答えた。
女の子二人である確率は?
例えば次のようなオッズの場合、純粋な事象型のジョウンズ氏 (確率 1/2) になりません。
|
|
|
|
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---|---|---|---|---|
二人とも女の子だと答える | 0 | 0 | 0 | 8 |
上の子は女の子だと答える | 0 | 0 | 10 | 1 |
下の子は女の子だと答える | 0 | 10 | 0 | 1 |
典型的な事象型のジョウンズ氏 (確率 1/2) のように見えても、ドラマチックに問題文が書かれていると怪しくなることがわかります。
質問に答えるスミス氏のケース
Rosenhouse, Jason.(2009). に書かれていた内容をヒントに思いつきました。スミス氏に 「子供はいるか」 と聞いたら 「二人いる」 と答えた。
次に 「男の子はいるか」 と聞いたら 「いる」 と答えた。
男の子二人である確率は?
次に 「男の子はいるか」 と聞いたら 「いる」 と答えた。
男の子二人である確率は?
例えば次のようなオッズの場合、純粋なスミス氏 (確率 1/3) になりません。
|
|
|
|
|
---|---|---|---|---|
二人とも男の子だと答える | 8 | 0 | 0 | 0 |
男の子はいると答える | 2 | 10 | 10 | 0 |
典型的な事象型のスミス氏 (確率 1/3) のように見えても、ドラマチックに問題文が書かれていると怪しくなることがわかります。
一人の子供の性別を述べている 「現象型」 の問題文の 「もう一人の子」 という言葉に惑わされることがある
惑わし その1
私の場合、男の子を連れた X氏に出会うというパターンの問題文に 「もう一人の子」 という言葉があると、どうしても単純なジョウンズ氏に思えて、一人の子供の性別が分かった経緯付のジョウンズ氏に思えません。一人の子供の性別が分かった経緯などどうでもよくなって、生まれ順や性別を考慮した場合分けが無用に思えるからです。
しかし 「初めて会ったX氏の子供は二人の子供のうちの一人で男の子だった」 という問題文の場合、 「もう一人の子も男の子か?」 という質問と、 「二人とも男の子か?」 という質問に意味の違いはありませんでした。
というわけで、私の勘違いだと分かって一件落着と思いきや、そう話は簡単ではありません。一人の子供の性別が分かった経緯を重視しない立場から見ても、「もう一人の子も男の子か?」 という質問と、 「二人とも男の子か?」 という質問に意味の違いはないからです。
一人の子供の性別が分かった経緯を重視しないで 「生まれ順や性別を考慮した場合分けは無用だ」 とする立場も認めるべきなのでしょう。
惑わし その2
私の場合、男の子を連れた X氏に出会うというパターンの問題文に 「もう一人の子」 という言葉があると、「出会ったその子がその子自身であること」 が証拠事象として重要な意味を持っているような錯覚をしてしまいました。そして、兄弟の性別構成が判明した時点でどっちの子に会ったか覚えていないような場合にはジョウンズ氏 (確率 1/2) でなくスミス氏 (確率 1/3) になると錯覚していました。
しかし、「初めて会ったX氏の子供は二人の子供のうちの一人で男の子だった」 が本当の証拠事象だと悟れば、出会った子を覚えているかどうか気にする必要はありませんでした。
あいまいさの無い子連れのX氏
Bar-Hillel,M. and Falk,R. 1982. の Problem 1 が次のような問題文だったら、私も 「もう一人の子」 という言葉に惑わされないですんだかも知れません。X氏には子供が二人いる。
一人の子を連れたX氏に会う予定だった。
会ってみると男の子を連れて来た。
「もう一人の子」 が男の子である確率は?
一人の子を連れたX氏に会う予定だった。
会ってみると男の子を連れて来た。
「もう一人の子」 が男の子である確率は?
二人の子供の性別構成を述べているつもりの問題文の 「もう一人の子」
一人の子供の性別でなく、二人の子供の性別構成を述べているつもりで書かれた問題文に 「もう一人の子」 という言葉が含まれていたら、スミス氏 (確率 1/3) かジョウンズ氏 (確率 1/2) かあやふやになります。子供の性別構成に関する 「事象」 を述べているようにも見え、一人の子供の性別に関する 「現象」 を述べているようにも見えるからです。
この問題について調べた Rutherford,M.D. 2010. の内容を、 別ページ 「あいまいなスミス氏の一族」 で調べました。
参考文献
-
Bar-Hillel,M. and Falk,R. 1982.
Som teasers conserning conditional probabilities.
Cognition 11:109-122.
-
Rosenhouse, Jason.(2009).
The Monty Hall Problem. Oxford University Press.
日本語訳
ジェイソン・ローゼンハウス著 「モンティ・ホール問題」. 松浦俊輔訳、青土社.
-
Rutherford,M.D. 2010.
"On the use and misuse of the "Two children" brainteaser".
Pragmatics and Cognition 18(1): 165-174.
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