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2014/05/30 22:54:28
初版 2013/07/26

あいまいなスミス氏の一族

二人の子供問題を論じるとき、子供が二人とも男の子である確率が 1/3 だか 1/2 だかあいまいな問題文を、それと知らずに使っているケースがあります。

あいまいでないスミス氏とジョウンズ氏

Wikipedia(英語版) の "Boy or Girl paradox" の記事によると、 Martin Gardner が 1959年に Scientific American 誌に発表した 「二人の子供問題」 とは次のようなものです。

ジョゥンズ氏の二人の子供のうち年長の子は女の子である。 二人とも女の子である確率は?
スミス氏の二人の子供のうち、少なくとも一人は男の子である。 二人とも男の子である確率は?

ジョゥンズ氏の子供が二人とも女の子である確率は1/2
スミス氏の子供が二人とも男の子である確率は1/3

以下、確率が1/2である方の問題文を「ジョウンズ氏」と呼び、
確率が1/3である方の問題文を「スミス氏」と呼び、
確率が1/3か1/2のどちらか不定な問題文を「あいまいなスミス氏」と呼ぶことにします。

あいまいなスミス氏の一族たち

Rutherford,M.D. 2010. の中で、正真正銘のスミス氏あいまいなスミス氏、その他の実例が、Version 1 ~ Version 11 として紹介されているので、順不同になりますが、分類しながら見て行きます。

正真正銘のスミス氏

Version 1

Feller,W.1950.に載っている確率が1/3 である模範的な問題文らしいです。
ちょうど二人の子供がいる家族について考えましょう。
ある家族には一人の男の子がいます。
その家族の子供が二人とも男の子である確率は?

私の目にも正真正銘のスミス氏(確率1/3)に見えます。

正真正銘のジョウンズ氏

Version2

Feller,W.1950.に載っている確率が1/2である模範的な問題文らしいです。
子供の人数が二人のある家族から
ランダムに選ばれた男の子が出て来ました。
もう一人の子も男の子である確率は?

私の目にも正真正銘のジョウンズ氏(確率1/2)に見えます。

Version 6

2013/08/15 に下記Wikipediaのバージョンを明記しました。
Wikipedia(英語版)の"Boy or Girl paradox" の記事 (23:55, 19 August 2006. の版) で確率 1/2 の問題文として書かれているものを取り上げています。
子供が二人いるある家族の年長の子は男の子です。
その家族の年少の子が女の子である確率は?

私の目にも、正真正銘のジョウンズ氏に見えます。

あいまいなスミス氏

Version 3

Martin Gardner の Mathematical Puzzles and Diversions (1959) に書かれている問題文を確率があいまいな例として取り上げています。
スミス氏が
「私は二人の子供がいて、少なくとも一人は男の子です。」
と言いました。
もう一人の子も男の子である確率は?

私の見るところ「もう一人の」という言葉があるため、あいまいなスミス氏になっているのだと思います。

Version 5

Discover誌のコラム"Fuzzy Math"(Alex Stoneがコラムオーナー)で論じられた問題文をあいまいな例として取り上げています。
二人の子の父である数学者があなたに、彼の子の一人は男の子だと伝えた後で、
もう一人の子も男の子である確率をあなたに聞いたとしたら・・・

私の目にもあいまいなスミス氏に見えます。

あいまいなスミス氏として紹介されているが、私には正真正銘のスミス氏に見えるもの

Version 4

PARADE 誌のコラム "Ask Marilyn" で議論された問題文を確率があいまいな例として取り上げています。
一人の女性にちょうど二人の子供がいて、 少なくとも一人は男の子であるとき、
二人とも男の子である確率は?

私の目には正真正銘のスミス氏なので、Rutherford,M.D. 2010. に賛成しかねます。

Version 7

2013/08/15 に下記Wikipediaのバージョンを明記しました。
Wikipedia(英語版)の"Boy or Girl paradox" の記事 (23:55, 19 August 2006. の版) で確率 1/3 の問題文として書かれているものをあいまいな例として取り上げています。
子供が二人の、ある家族について、子供のうち少なくとも一人は男の子です。
この家族の子の中に女の子がいる確率は?
注:この問題の答えは 2/3 ですが、二人とも男の子である確率に置き換えると 1/3 になります。

私の目には正真正銘のスミス氏なので、Rutherford,M.D. 2010. に賛成しかねます。

あいまいなスミス氏として紹介されているが、私には正真正銘のジョウンズ氏に見えるもの

Version 8

Bar-Hillel,M. and Falk,R. 1982.に出て来る問題文 (Problem 1) をあいまいな例として上げています。
スミス氏は二人の子の父です。
若い男の子を連れた彼と道で出会ったら、その子を息子として紹介してくれました。
スミス氏のもう一人の子も男の子である確率は?

私には確率が 1/2 に思えるので、あいまいなスミス氏ではなく、スミス氏のふりをしたジョウンズ氏に見えます。

· · ·  と、2013/07/26 に書きましたが、実際は、一人の子が男の子だと分かった経緯が書かれている問題文なので、 「スミス氏のふりをしたジョウンズ氏」 ではなく、 「子供の性別が分かった経緯付きジョウンズ氏 」 でした。 (現象型の二人の子供問題)
Bar-Hillel,M. and Falk,R. 1982. に確率 1/3 が正解として書かれていると私は読み取りましたが、読み返してみると、問題文のずっと後ろに正解は 1/2 だと書かれているので、私の読み間違いでした。
Rutherford,M.D. 2010. も私と同じように読み間違えています。

Fox, C.R. & Levav, J. (2004). の実験で、「あいまい版」と「あいまいでない版」が対比的に使われた問題文

Fox, C.R. & Levav, J. (2004). の中で、あいまいな問題文とあいまいでない問題文を比較する実験を行っています。

Version 9

あいまいな方の問題文を取り上げています。
スミス氏が
「私には二人子供がいてそのうちの少なくとも一人は男の子である」
と言いました。
この情報から、もう一人の子が男の子である確率は?
(上記のMartin Gardner の問題文に似ています)

私の目にも、あいまいなスミス氏です。

Version 10

あいまいでない方の問題文を取り上げています。
スミス氏が
「私には二人子供がいるが、二人とも女の子というわけではない」
と言いました。
この情報から、子供たちが二人とも男の子である確率は?

私の目にも、正真正銘のスミス氏です。

Rutherford,M.D. 2010.本人による実験に使われた問題文

Version 11

Rutherford,M.D. 2010.は確率は 1/2 だとしています。
子供が二人の家族すべての中から、 ランダムにひとりの子を抽出したら女の子でした。
その家族の 2番目の子も女の子である確率は?
子供が二人の家族すべてを合わせた中で、子供たちの男女の数は均等です。

私は「二人の家族すべて」という言葉があるために、家族の個数が無限個から有限個に減ってしまったので、スミス氏ジョウンズ氏とは別の問題になっているように思います。 (スミス氏の子供問題と紛らわしい問題がある参照)

別の意味であいまいなスミス氏

2014/02/08 に 「最もあいまいなスミス氏」 という項のタイトルを変えて、内容も一新しました。
2014/02/17 に 「もう一人の子」 という言葉の働きについて、内容を修正しました。

Version 8 (Bar-Hillel,M. and Falk,R. 1982. の中で実験に使われた "Problem 1") が一番紛らわしい問題文です。
一人の子供の性別が分かった経緯が偶然によるものであるために、確率が 1/2 か 1/3 かわかり難くなった上に、問題文の中に 「もう一人の子」 という言葉があるために、確率が 1/2 である理由までもあいまいになっています。
この問題文の 「もう一人の子」 という言葉の悩ましさについては別ページ 「現象型の二人の子供問題」 (旧 「子供の性別が分かった経緯付きジョウンズ氏とスミス氏」) でも触れています。


参考文献



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