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2014/01/18 21:25:03
初版 2013/10/20 「理由不十分の原理やゲームの反復を考えると」 というページの代

2014/01/14 に 「理由不十分の原理やゲームの反復を考えると」 というページから理由不十分の原理に関する部分だけ抜き出してこのページを作りました。

理由不十分の原理を考えると

「封筒を開けてから交換型」の二封筒問題であれば、「確率分布が分かっていない」ということを理由に封筒を替えたときの期待値を論じることができそうな気がしてきます。

確率分布が分からなければ同確率条件が成立するとして封筒を交換すべきだと結論する議論

統計数学の世界には「理由不十分の原理」 (英語では"principle of insufficient reason") というものがあります。
確率分布が不明な標本空間に対して「とりあえず」の確率を定める基準の一つであり、確率の差異を判断する根拠がまったくないときに均等に確率を配分する手法です。
「理由不十分の原理」を用いるときでも、確率論の公理を満たすように留意することを怠ってはいけません。

「封筒を開けてから交換型」の二封筒問題に「理由不十分」の原理を適用すると、次のように「同確率条件」が成立しそうに思えます。

選んだ封筒の中身が x 円だったとする。
残りの封筒の金額 y が x の倍や半分である確率に「理由不十分の原理」を 適用すると、どちらも確率 1/2 となる。(同確率条件
そうすると、y の期待値は (1/2)2x + (1/2)(x/2) = 1.25 x となる。
この論法は金額 x によらないで成立するので、「封筒を開けてから交換型」の二封筒問題では、開けた封筒の金額によらず 封筒を交換した方が有利だと結論付けることができる。   パラドックスの再燃


このように「理由不十分の原理」を持ち出すと二封筒問題のパラドックスの再燃を引き起こしそうですが、このようなパラドックスの再燃は、下に示す理由から錯覚に過ぎないことがわかります。

理由1: 二封筒問題には理由不十分の原理を適用することはできない

私は統計数学に詳しくないので、間違っているかも知れませんが、「理由不十分の原理」は確率分布のパターンが決まっているときにしか使えない原理だと思います。
したがって、二封筒問題のように、金額分布が離散的か連続的か、金額の上限値はあるのかないのか、金額の平均値は有限なのか無限大なのかが定まっていない場合には適用できないと、私は思います。

理由2: 同確率条件 がなりたつことはあり得ない

別ページ 二封筒問題の数学 の付録で論じたように、同確率条件 (封筒を交換したら倍になる確率が選んだ封筒の金額によらずに 1/2 であること) が成立することはありえないと思います。
私が読んだ二封筒問題に関する数学論文のどれにもそのような確率分布が報告されていないので、間違いないと思います。
したがって、もしも仮に二封筒問題に「理由不十分の原理」が適用できたとしても、同確率条件 が成立するような確率分布を「理由不十分の原理」から導くのは間違いであることがわかります。 「理由不十分の原理」はあくまでも確率論と矛盾しないように適用しなければならないからです。

日常の確率論なら理由不十分の原理は適用できる

二つの封筒問題を現実のゲームだと考え、自分が封筒を選ぶ立場に居るとするならば、確率分布が定まっていようがいまいが、意思決定しなければなりません。
この場合には数学は全く役に立たず、自分の経験と勘しか頼りになりません。

その経験と勘の一つに「日常の確率論における理由不十分の原理」というものがあります。
例えば、封筒の中身が紙に書かれた数字であり、1兆より大きくても、1より小さくてもよいなら、開けた封筒から出てきた数字のあたりで一様分布していると考えるのは、数学の確率論なら公理に反するのでNGですが、日常の確率論ならOKです。 その人の勘によるものであり、他の人には関係ないからです。

ベイズ統計の 「impoper な事前確率」 (improper priors) としてなら 同確率条件 が成り立つ確率分布を考えてもよいらしい

2014/01/18 にこの項を加えました。

Wikipedia(英語版) の "Prior probability"(事前確率)の記事 (07:56, 8 January 2014. の版) の "improper priors" の項によると事前確率としてなら確率の和が 1 にならない確率分布を考えてもよいとするベイズ統計学者もいるそうです。
この考え方を二つの封筒問題に適用している資料をネットで検索してみたら、統計学博士の美添泰人教授(トリビアの泉にも出演)がお書きになった「確率に関するパラドックス(その1)」という資料 が見つかりましたが、その他には目ぼしいものがヒットしませんでした。
「impoper な事前確率」 から導いた事後確率による期待交換利得が常に正だからといって、 もともとが improper な事前確率の世界に戻ってパラドックスを感じても仕方がないので、人々の興味をひかないのでしょう。


用語解説



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