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事前確率と事後確率をつなぐもの
2012/12/08 19:19:57
扉を switch することで賞品を得る確率について、ホストがどの扉を開くか考慮しないで求めた確率は、すなわちswitchに着目した解答での確率は、ホストが扉を開いたという証拠事象の前の「事前確率」でもある。一方、ホストが扉3という特定の扉を開いた後の switch で賞品を得る確率はホストが扉3という証拠事象の後の「事後確率」である。
これら2種類の確率がなぜ等しいのか理解できない統計数学者が 1992年頃にいたくらいであるから、一般の素人にはなおさら理解が困難であり、「挑戦者が選ばなかった2つの扉のどちらかが当たりの確率が、ホストが扉を開いた後に残りの扉に継承される」といった、素人説明が流布している。
ここでは、それらの確率が、
標準仮定の下で等しくなる理由を図解する方法をご紹介する。
事前確率
①当たり扉はランダムかつ等確率に設定される
②ホストは挑戦者の選んだ扉を開けない
③ホストは必ず残りの扉を一枚開ける
④ホストはハズレの扉しか開けない
これらにより、挑戦者が扉1を選らんだときの事前確率は下図のようになる。面積の大きい方が 2/3 で,,狭い方が 1/3 である。
証拠事象を特定しない事後確率
②ホストは挑戦者の選んだ扉を開けない
③ホストは必ず残りの扉を一枚開ける
④ホストはハズレの扉しか開けない
これらにより、ホストがいずれかの扉を開けるという事象が、上記の事前確率の図の事象と独立であることがわかるので、ホストがいずれかの扉を開いた後の事後確率が次のようになる。
証拠事象を特定した事後確率
①当たり扉はランダムかつ等確率に設定される
⑤ホストは挑戦者の選んだ扉が当たりのとき、ハズレ扉をランダムかつ等確率に選んで開ける
(この仮定を以後「ホストによる等確率開扉の仮定」と呼ぶこととする)
これらにより、扉2または扉3が当たりのときにホストが開ける扉の決定に対称性があることと、扉1が当たりのときにホストが開ける扉の決定に対称性があることがわかる。ゆえに、ホストが扉2を開いた後の事後確率と扉3を開いた後の事後確率が次のようになる。
Wikpedia(英語版) の "Monty Hall problem" の記事での扱い
"From simple to conditional by symmetry" の項で、 Gill さんが詳しく論じている。 (17:34, 22 November 2012 の版)
用語解説
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標準仮定
モンティ・ホール問題や3囚人問題を数学的に解くためには問題文に明示的に書かれていない条件を仮定する必要がある。
標準仮定はそうした仮定の一つであり、モンティ・ホール問題の場合、次のような内容となっている。
①当たり扉はランダムかつ等確率に設定される
②ホストは挑戦者の選んだ扉を開けない
③ホストは必ず残りの扉を一枚開ける
④ホストはハズレの扉しか開けない
⑤ホストは挑戦者の選んだ扉が当たりのとき、ハズレ扉をランダムかつ等確率に選んで開ける
⑥ホストは扉を開けた後に必ずswitchの機会を挑戦者に与える
1975年に モンティ・ホール問題を発案した Steve Selvin も、
1990~1991年に PARADE誌のコラム"Ask Marilyn"で論争した人々の多くも、
標準仮定のもとに議論していた。
標準仮定は当たり扉の配置や、ホストの行動パターンなどに完全な対象性を仮定しているので、数学的には最も単純な仮定である。
「標準仮定」(the standard assumptions)とは Wikipedia(英語版)の "Monty Hall problem"の記事で導入された言葉である。
3囚人問題の標準仮定は、「⑥ホストは扉を開けた後に必ずswitchの機会を挑戦者に与える」を除いたものになる。