モンティ・ホール問題好きのホームページ    プライバシーポリシー

トップページに戻る
2014/08/31 10:09:27
初版 2014/01/22

「財布のゲーム」 のパラドックスと 「二つの封筒問題」 のパラドックスの違う点と似ている点

「財布のゲーム」とは

Martin Gardner が1981年の Aha! Gotcha に載せた 「財布のゲーム」 のパズルは、二つの封筒問題の原型の一つです。
Kent G. Merryfield, Ngo Viet, and Saleem Watson (1997). によると次のような問題だったそうです。

二人の男がそれぞれの財布をテーブルに置く。
自分の財布に最少額の金額が入っていたら相手の財布の金を勝ち取る。
お互いが次のように考えた。
自分は手持ちの金額を失うかもしれないが、それ以上を得るかもしれない。
だからこのゲームは自分に有利だ。

二人の男が相手の財布の中身を知らないことは明白ですが、自分の財布の中身を知っているかどうかは不明です。

「財布のゲーム」 にも色々なバージョンがあるらしいので、上記のバージョンを「財布のゲーム(元祖版)」 と呼ぶことにします。
Wikipedia(英語版) の "Two envelopes problem" の記事 (01:06, 5 April 2014 の版) に載っている "wallet game" の問題文は、上記のものとかなり異なっているように私には思えます。

「財布のゲーム(元祖版)」 と 「二つの封筒問題」 のパラドックスとしての共通点

「二人とも自分が有利だと考えるのはおかしい!」 という 「財布のゲーム(元祖版)」 のパラドックスと、「こちらの封筒でも交換すると有利で、あちらの封筒でも交換すると有利なのはおかしい!」 という二つの封筒問題のパラドックスの構造が共通しています。

「財布のゲーム(元祖版)」 と 「二つの封筒問題」 のゲームの設定上の違い

「財布のゲーム(元祖版)」 と 「二つの封筒問題」 の数学的計算上の違い

「二つの封筒問題」 では金額の平均値が無限大でもないかぎり、常に交換した方が有利だというようなことはありませんが、「財布のゲーム(元祖版)」 ではふつうに起きてしまいます。
例えば、自分も相手も平均で千円が入っているとして、自分はたいてい千円入っていて、相手は五百円と千五百円の間を行ったり来たりしているような場合、 確率 50% で勝つことになるので、一ゲーム当り、平均して二百五十円もうかります。
Kent G. Merryfield, Ngo Viet, and Saleem Watson (1997). ではさらに詳しく分析していて、 ゲームの参加者にとって公平になる条件を議論しています。 二つの封筒が互角であることが最初から保証されている二つの封筒問題では議論されないテーマです。

「財布のゲーム(元祖版)」 と 「二つの封筒問題」 の心理学(哲学?)上の共通点

「二つの封筒問題」ではパラドックスの原因がいまだにはっきりしません。パラドックスの原因を 「確率の錯覚」 に求めることも、「変数の誤用」 に求めることもできるからです。

「財布のゲーム(元祖版)」でも事情は同じで、問題文の中の、 
「自分は手持ちの金額を失うかもしれないが、それ以上を得るかもしれない」 という下りを読んで、
「金額を特定したら負ける確率と勝つ確率が等しいとは限らない」 と 「確率の錯覚説」 を唱えることもできるし、
「負けやすいのは自分の金額が高めのときで勝ちやすいのは自分の金額が低めのときだ」 と 「変数の誤用説」 を唱えることもできるからです。


参考文献



用語解説



トップページに戻る