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2013/08/18 14:36:36

世界的モンティ・ホール問題のオリジナル

世界的モンティ・ホール問題

1990年9月から1991年2月に掛けてアメリカの雑誌PARADEのコラム "Ask Marilyn"で大論争が繰り広げられ、1991年7月21日(日)にニューヨークタイムスの特集記事が組まれて、世界的に有名になった問題文を作ったのは当時数学の先生だった Craig F. Whitaker という人です。

ゲーム番組にあなたが出演していて、三つの扉のどれかを選択できると仮定してください。
一つの扉の後ろに自動車があり、残りの扉の後ろにはそれぞれヤギがいます。
あなたは一つの扉、たとえば扉1を選び、どの扉の後ろに何があるか知っているホストは、 ヤギがいると知っている別の扉、たとえば扉3を開けます。
彼はあなたに言います。「扉2にしたいですか?」
選択を switch する方があなたにとって有利でしょうか?
クレイグ F. ホウィタカー
メリーランド州クリーブランド
---Whitaker, Craig F. (1990). から翻訳
※「あなた」とは Whitaker さんが質問した相手、すなわち Marilyn vos Savant のこと

しかし彼が "Ask Marilyn" に送った質問の手紙と、雑誌に載った問題文には違いがあったらしいことが、下記の資料からわかりました。

 Page, Lane (2005).
 Morgan, J. P., Chaganty, N. R., Dahiya, R. C., and Doviak, M. J. (2010),

世界的モンティ・ホール問題のオリジナル

上記の資料から判断すると、 Whitaker さんが Marilyn vos Savant に出した質問は次のような構成だったと想像できます。

前半部分
上記の世界的モンティ・ホール問題を提示しているらしい。

後半部分
次のような質問をしているらしい。

私は 扉の後ろに何があるか Monty が知っている状況と知らない状況の、2つの状況について検討しました。
1方の状況では switch した方が有利で、もう 1方の状況では switch しても有利にならないと思います。
あなたのお考えは?


Morgan, J. P., Chaganty, N. R., Dahiya, R. C., and Doviak, M. J. (2010), には、Whitaker さんから入手したオリジナルの質問文が Mike なんとかという人を経由して彼らのもとに届いたと書いてあるが、次のような事情があるので、 "Ask Marilyn" に送られたオリジナルの質問文とは言葉使いがかなり食い違うでしょう。

・ 20年以上も前の手紙の写しを Whitaker さんが保存していた可能性は高くない。
・ Mike なんとかという人に書面で伝わったのか、口伝で伝わったのか、書かれていない。

しかし、Witaker さんに直接取材して書かれた取材記事 (Page, Lane (2005). ) にも同じような内容のことが書かれているので、おおまかな内容は信用できます。

前半にない Monty という固有名詞が後半部分に現れていますが、このようなわけで、Whitaker さんが "Ask Marilyn" に送った手紙の中ではどうだったか不明です。

特筆すべきは、後半部分の存在を前提にすると、モンティ・ホール問題の数学的なとらえ方に制限が加わることです。
ホストが扉の後ろに何があるか知らない状況に対する解は、ホストが当たり扉を開けなかった範囲に標本空間を絞り込む必要があるため、 「特定事象による条件付確率あるいは事後確率の問題設定」 、 もしくは 「不特定事象による条件付確率あるいは事後確率の問題設定 」 しか取ることができず、バランス上、ホストが扉の後ろに何があるか知っている状況に対する解もそうならざるを得ないからです。

Savant は Whitaker さんの質問に答えたことになるか

Marilyn vos Savant が "Ask Marilyn" で取り上げたのは Whitaker さんの質問の前半部分だけだったと知った人がとる立場は色々あります。

立場1  "Ask Marilyn" が一度に1つの質問に答えるというスタイルらしいので、後半の付け足しの質問が省略されてもおかしくない。
立場2  質問者の意図は後半部分の方にあるのだから、前半部分に回答しても Whitaker さんの質問に答えたことにならない。

どの立場を取る人も、 Marilyn vos Savant が後半部分の質問にも答えていたら、モンティ・ホール問題の歴史が変わっていたと考えるでしょう。彼女がそうしていたら、次のような展開になったからです。
 
「ホストが扉の後ろに何があるか知らない状況では switch しても有利にならない」 と答えて、直感的な答えと一致して人々を安心させるから、 大勢の人が反論する騒動にならなかった。

ホストが扉の後ろに何があるか知っている状況と知らない状況を比較できるような分析をしなければならないから、大勢の博士たちがうっかり反論するようなこともなかった。 
「条件付確率あるいは事後確率の問題設定」 で議論しているので、1991年2月17日の PARADE 誌で、Mariryn vos Savant が 「非条件付確率の問題設定」 での実験を提案することもなく、全米の小学校~大学でその実験が行われることもなく、数学の素人の Marilyn vos Savant が数学博士に勝ったというセンセーションが知れ渡ることもなく、 New York Times で取り上げられることもなかった。

1975年に Steve Selvin が 「元祖モンティ・ホール問題」 を作って以来 「非条件付確率の問題設定」 で議論することが多いので、 Whitakerさんの作った 「条件付確率あるいは事後確率の問題設定」 でしか議論できない問題文は人気が出なかった。 
行動経済学の本で取り上げられることもなく、私の目にふれることもなく、あなたが今読んでいるこのページも書かれなかった。 




参考文献

用語解説



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