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2015/01/11 16:29:42
初版 2014/01/18

スマリヤンの二つの文のパラドックス

スマリヤンのパズル本に出てくる二つの封筒問題を題材とした二つの文 (あるいは二つの命題) とその証明が新たなパラドックスを醸し出しています。

スマリヤンの二つの文とそのパラドックス

2014/01/23 にスマリヤンの書いた本の翻訳本を読んだ結果に基づいて、この項を全面的に書き替えました。

スマリヤンの二つの文

Smullyan, Raymond (1992). の翻訳本や Smullyan, R.: 1997, の翻訳本に書かれているスマリヤンの二つの文とは、次のようなものです。 命題2の証明で封筒の金額の差に着目しているのは、うまいトリックです。差が決まれば金額の組み合わせも決まってしまうことをうまく隠しています。

スマリヤンはこの二つの文とその証明を次のような手順で提示しています。

Wikipedia(英語版) の奇妙な記述

Wikipedia(英語版) の "Two envelopes problem" の記事 (07:41, 2 January 2014 の版) では、Smullyan, Raymond (1992). に出てくるスマリヤンの二つの文を次のように紹介しています。 これらの文には「潜在的な」という言葉が含まれているので、スマリヤンが強調している 「確率の要素がない」 ということに反するように、私は思います。

スマリヤンの二つの文のパラドックス

次のような矛盾を感じる錯覚現象がスマリヤンの二つの文のパラドックスです。

スマリヤンのパラドックスの解明

最初は私もこのパラドックスに悩みましたが、じっくり考えると次のようでした。 スマリヤンの二つの文が両立することがあることは具体例を考えると一発でわかります。

千円札1枚の封筒と千円札2枚の封筒の組み合わせと、  千円札2枚の封筒と千円札4枚の封筒の組み合わせがあるときに、 封筒を一つ選んだときのことを考える。 ← 2015/01/11 に訂正

選んだ封筒の金額を特定した場合
選んだ封筒が 2千円だったとする。
封筒を交換して半減したら千円の損で得したら 2千円の得で得の方が大きい。

二つの封筒の金額の組み合わせを特定した場合
選んだ封筒の一方は千円で他方が 2千円だったとする。
選んだ封筒が 2千円だったら交換して千円損し、選んだ封筒が千円だったら交換して千円得するので損と得は等しい。

次の点がポイントです。 この二つを区別できない心理を私は スマリヤンの錯覚 と呼んでいます。

二封筒問題とは別のパラドックス

二つの封筒問題のパラドックスは 「場合分け」 をきちんとしないで確率や期待値を計算するために起こる錯覚ですが、スマリヤンのパラドックスは 「別種」 の 「場合分け」 を混同するために起こる錯覚なので、別のパラドックスであることがわかります。

2014/01.24 に余談1を廃止して下記を書き足しました。

スマリヤン自身は 「二つの封筒問題の本質には確率は不可欠でない」 といったようなことを書いているので、別のパラドックスであることを認識していないのかも知れません。
2014/03/15 に一部を削除し一部を書き足しました。

あるいは 二封筒問題のおまじないの王様 をとなえて 「二つの封筒問題」 を解決したつもりの人たちをからかうために、こんなパラドックスを思いついたのかも知れません。

余談1
2014/01/24 に一部を削除し一部を書き足しました。

Wikipedia (英語版) の "Two envelopes problem" の記事 (07:41, 2 January 2014 の版) でスマリヤンのパラドックスを論じている項の "Non-probabilistic variant" という表題からわかるとおり、スマリヤンのパラドックスには確率や期待値が関係しないという説が主流のようです。
私は排他事象の効用を比較するような文の背後には無意識の確率概念(数学ではなく日常の確率概念)が隠れているように私は思いましたが、 「増額」や「減額」 を 「効用でなく単なる数値として考えた場合」 という条件付きならば、確率や期待値が関係しないという説も一理あるでしょう。 ( ← 2015/01/11 訂正)

余談2
2014/01.24 に一部削除と一部訂正をしました。
Wikipedia (英語版) の "Two envelopes problem" の記事 (07:41, 2 January 2014 の版) では "Non-probabilistic variant" の中に、スマリヤンのパラドックス専用の "Proposed resolutions" という項まで立てているので、"Two envelopes problem" のの投稿者たちはスマリヤンのパラドックスが二つの封筒問題のパラドックスとは別のパラドックスだと考えているのかも知れません。



参考文献

用語解説



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