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スマリヤンはこの二つの文とその証明を次のような手順で提示しています。
次の点がポイントです。
2014/01.24 に余談1を廃止して下記を書き足しました。
スマリヤン自身は 「二つの封筒問題の本質には確率は不可欠でない」 といったようなことを書いているので、別のパラドックスであることを認識していないのかも知れません。
2014/03/15 に一部を削除し一部を書き足しました。
あるいは 二封筒問題のおまじないの王様 をとなえて 「二つの封筒問題」 を解決したつもりの人たちをからかうために、こんなパラドックスを思いついたのかも知れません。
余談1
2014/01/24 に一部を削除し一部を書き足しました。
Wikipedia (英語版) の "Two envelopes problem" の記事 (07:41, 2 January 2014 の版) でスマリヤンのパラドックスを論じている項の "Non-probabilistic variant" という表題からわかるとおり、スマリヤンのパラドックスには確率や期待値が関係しないという説が主流のようです。
私は排他事象の効用を比較するような文の背後には無意識の確率概念(数学ではなく日常の確率概念)が隠れているように私は思いましたが、 「増額」や「減額」 を 「効用でなく単なる数値として考えた場合」 という条件付きならば、確率や期待値が関係しないという説も一理あるでしょう。 ( ← 2015/01/11 訂正)
余談2
2014/01.24 に一部削除と一部訂正をしました。
Wikipedia (英語版) の "Two envelopes problem" の記事 (07:41, 2 January 2014 の版) では "Non-probabilistic variant" の中に、スマリヤンのパラドックス専用の "Proposed resolutions" という項まで立てているので、"Two envelopes problem" のの投稿者たちはスマリヤンのパラドックスが二つの封筒問題のパラドックスとは別のパラドックスだと考えているのかも知れません。
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2015/01/11 16:29:42
初版 2014/01/18
スマリヤンの二つの文のパラドックス
スマリヤンのパズル本に出てくる二つの封筒問題を題材とした二つの文 (あるいは二つの命題) とその証明が新たなパラドックスを醸し出しています。スマリヤンの二つの文とそのパラドックス
2014/01/23 にスマリヤンの書いた本の翻訳本を読んだ結果に基づいて、この項を全面的に書き替えました。スマリヤンの二つの文
Smullyan, Raymond (1992). の翻訳本や Smullyan, R.: 1997, の翻訳本に書かれているスマリヤンの二つの文とは、次のようなものです。- 文1と文2
文1 封筒を交換して増額する場合の増額は封筒を交換して半減する場合の減額を上回る。
文2 それらの金額(増額と減額)は等しい。 - 文1の証明
交換前の金額を x とすると、封筒を交換して増額する場合の増額は x で、 封筒を交換して半減する場合の減額はx/2 なので、文1 が成り立つ。 - 文2の証明
二つの封筒の金額の差を d とすると、封筒を交換して増額する場合の増額は d で、 封筒を交換して半減する場合の減額も d なので、文2 が成り立つ。
スマリヤンはこの二つの文とその証明を次のような手順で提示しています。
- 最初に普通の二つの封筒問題を提示
- 確率の要素を含まないバージョンもあると予告
- スマリヤンの二つの文とその証明を提示
Wikipedia(英語版) の奇妙な記述
Wikipedia(英語版) の "Two envelopes problem" の記事 (07:41, 2 January 2014 の版) では、Smullyan, Raymond (1992). に出てくるスマリヤンの二つの文を次のように紹介しています。- 文1 封筒の中の金額を A とすると、封筒を交換すると A だけ増えるか A./2 だけ減る。 従って潜在的な得が潜在的な損を上回る。
- 文2 二つの封筒の中の金額が X と 2X の組み合わせだとすると、封筒を交換して X だけ増えるか X だけ減る。 従って潜在的な得と潜在的な損が等しい。
スマリヤンの二つの文のパラドックス
次のような矛盾を感じる錯覚現象がスマリヤンの二つの文のパラドックスです。- スマリヤンの二つの文はどちらも正しい。
- スマリヤンの二つの文は両立しない。
スマリヤンのパラドックスの解明
最初は私もこのパラドックスに悩みましたが、じっくり考えると次のようでした。- スマリヤンの文1 は金額によって成立しないことがある。
たとえば最低金額だったら交換しても半減のしようがない。 - 「スマリヤンの二つの文は両立しない」 と感じるのは錯覚で実際は両立することがある。
- 文1に出てくる「増額」と「減額」が文2に出てくる「増額」や「減額」と同じものを表しているということの証明が欠けている。 2014/01/24 にこの行を書き加えました
- 「増額」や「減額」は排他事象の「効用」なので確率を掛け算しないで比べる文1 や文2 に意味はないかというと、 「効用でなく単なる数値として考えた場合」 という条件付きならば意味がある。 「二つの封筒問題」 にからめて新たなパラドックスを発生させる巧妙なトリックである。 2014/03/15 にこの行を書き換えました
千円札1枚の封筒と千円札2枚の封筒の組み合わせと、
千円札2枚の封筒と千円札4枚の封筒の組み合わせがあるときに、 封筒を一つ選んだときのことを考える。 ← 2015/01/11 に訂正
選んだ封筒の金額を特定した場合
選んだ封筒が 2千円だったとする。
封筒を交換して半減したら千円の損で得したら 2千円の得で得の方が大きい。
二つの封筒の金額の組み合わせを特定した場合
選んだ封筒の一方は千円で他方が 2千円だったとする。
選んだ封筒が 2千円だったら交換して千円損し、選んだ封筒が千円だったら交換して千円得するので損と得は等しい。
選んだ封筒の金額を特定した場合
選んだ封筒が 2千円だったとする。
封筒を交換して半減したら千円の損で得したら 2千円の得で得の方が大きい。
二つの封筒の金額の組み合わせを特定した場合
選んだ封筒の一方は千円で他方が 2千円だったとする。
選んだ封筒が 2千円だったら交換して千円損し、選んだ封筒が千円だったら交換して千円得するので損と得は等しい。
次の点がポイントです。
- 文1 の場合、選んだ封筒の金額を特定して、その範囲に絞って場合分けを考えている。
- 文2 の場合、二つの封筒の金額の組み合わせを特定して、その範囲に絞って場合分けを考えている。
二封筒問題とは別のパラドックス
二つの封筒問題のパラドックスは 「場合分け」 をきちんとしないで確率や期待値を計算するために起こる錯覚ですが、スマリヤンのパラドックスは 「別種」 の 「場合分け」 を混同するために起こる錯覚なので、別のパラドックスであることがわかります。2014/01.24 に余談1を廃止して下記を書き足しました。
スマリヤン自身は 「二つの封筒問題の本質には確率は不可欠でない」 といったようなことを書いているので、別のパラドックスであることを認識していないのかも知れません。
2014/03/15 に一部を削除し一部を書き足しました。
あるいは 二封筒問題のおまじないの王様 をとなえて 「二つの封筒問題」 を解決したつもりの人たちをからかうために、こんなパラドックスを思いついたのかも知れません。
余談1
2014/01/24 に一部を削除し一部を書き足しました。
Wikipedia (英語版) の "Two envelopes problem" の記事 (07:41, 2 January 2014 の版) でスマリヤンのパラドックスを論じている項の "Non-probabilistic variant" という表題からわかるとおり、スマリヤンのパラドックスには確率や期待値が関係しないという説が主流のようです。
私は排他事象の効用を比較するような文の背後には無意識の確率概念(数学ではなく日常の確率概念)が隠れているように私は思いましたが、 「増額」や「減額」 を 「効用でなく単なる数値として考えた場合」 という条件付きならば、確率や期待値が関係しないという説も一理あるでしょう。 ( ← 2015/01/11 訂正)
余談2
2014/01.24 に一部削除と一部訂正をしました。
Wikipedia (英語版) の "Two envelopes problem" の記事 (07:41, 2 January 2014 の版) では "Non-probabilistic variant" の中に、スマリヤンのパラドックス専用の "Proposed resolutions" という項まで立てているので、"Two envelopes problem" のの投稿者たちはスマリヤンのパラドックスが二つの封筒問題のパラドックスとは別のパラドックスだと考えているのかも知れません。
参考文献
-
Smullyan, Raymond (1992).
Satan, Cantor, and infinity and other mind-boggling puzzles.
Alfred A. Knopf. pp. 189–192. ISBN 0-679-40688-3.
日本語訳「スマリヤンの無限の論理パズル : ゲーデルとカントールをめぐる難問奇問」
レイモンド・スマリヤン著 ; 長尾確訳. 白揚社
-
Smullyan, R.: 1997,
The Riddle of Scheherazade, and Other Amazing Puzzles,
Ancient and Modern, Knopf, New York.
日本語訳「スマリヤンの究極の論理パズル 数の不思議からゲ-デルの定理へ」
白揚社
用語解説
-
二封筒問題のおまじないの王様
二つの封筒問題から人々が感じるパラドックスは多岐にわたっていますが、それぞれのパラドックスを解消するために唱える非数学的な説明を「おまじない」と私は呼んでいます。
選んだ封筒の金額が決まった後でも封筒を交換して倍になる確率と半減する確率がともに1/2 だと信じている人が陥るパラドックスを解消する「おまじない」にも色々ありますが、その中で、選んだ封筒の金額を条件として考えるのは誤りだ唱える「おまじない」をよく見かけるので、私はそれを「二封筒問題のおまじないの王様」 と呼んでいます。
選んだ封筒の金額を特定しない点が特徴です。
-
スマリヤンの錯覚
私の造語です。
封筒を交換したらどうなるかを考えるときに、選んだ封筒の金額を条件として考えるやり方と、二つの封筒の金額の組み合わせを条件として考えるやり方が、同じ問題を考えているという錯覚です。
この錯覚に罹った人は、二封筒問題のおまじないの王様を唱えたり、スマリヤンの二つの文のパラドックスに罹ったりします。
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