モンティ・ホール問題好きのホームページ    プライバシーポリシー

トップページに戻る
2017/08/05 12:48:21
初版 2017/07/24

別の論文

別のページ 「ある論文」 の中で 「ある二つの論文」 と呼んでいるもののうち、哲学者によって書かれた方の論文に興味深い内容を見つけました。
それは 「二組の金額ペア妄想説」 と 「変数誤用説」 の中間のような説です。

二組の金額ペア妄想説」 と 「変数誤用説」 の中間のような説が書かれた論文の内容

書かれた時期その他
1994 年に発表
Google Scholar 調べ (2017年7月) で、引用文献数 13 (多からず少なからず)

金額の表現形式
この論文の中では封筒の中の金額を表現するときに "emv ( … )" のように表現しています。
"emv" とは "expected monetary value" の略なので、金額の期待値を表しているようです。
論文の最後の方に 「他方の封筒の emv はあなたの封筒の emv の 1.25 倍だというのは …」 という語句が現れることから、 この論文では渡された封筒の金額の期待値と他方の封筒の金額の期待値の関係を論じていることがわかります。
"expected … value" とは意思決定論の分野で使われる用語かも知れません。


使用している問題文
この論文が採用している問題文は 「開ける前に交換型」 で、 最初の封筒選択の前に次のような金額配置プロセスが記述されています。
  • A封筒と B封筒を用意する。
  • A封筒に種金額を入れる。
  • 確率半々で B封筒に種金額の倍または半分を入れる。
パラドックスを起こす期待対計算式として次のような式が提示されています。
他方の封筒の金額の期待値 = 0.5 (0.5 × あなたの封筒の金額の期待値) + 0.5 (2 × あなたの封筒の金額の期待値) = 1.25 × あなたの封筒の金額の期待値
私の注:
この論文が Nalebuff, Barry.(1989). を引用していることと、上記の内容から上記の問題文は Nalebuff, Barry.(1989). に書かれている問題文をベースにしているようです。


封筒A、封筒B、渡された封筒、他方の封筒のそれぞれの金額の期待値の関係
次のような関係式を立てています。
渡された封筒の金額の期待値 = 0.5 × 封筒Aの金額の期待値 + 0.5 × 封筒Bの金額の期待値 = 他方の封筒の金額の期待値


「可能世界(possible world) 」 という用語
(2017/08/05 に追加)
「可能世界(possible world) 」 という言葉が出て来ます。
渡された封筒の金額が $4 のとき、封筒を交換すると $2 か $8 が交換した封筒に入っている。
その封筒を基準に考えると次のようにおかしなことになる。
渡された封筒の金額の期待値 = $4 の期待値 = 0.5 × 交換後の封筒の金額の期待値 + 0.5 × 交換後の封筒の金額の期待値 = 1.25 × 交換後の封筒の金額の期待値?
そして次のように説明しています。
交換後の封筒の金額が $2 と $8 の場合で、「可能世界(possible world)」 が異なる。
上記のおかしな式では、渡された封筒の金額が二つの異なる可能世界をまたがって $4 に固定されている。

私の注:
異なる可能世界をまたがってある確率変数の値を制限して 「条件付期待値」 を考えなければ数学的に二つの封筒問題を考えたことになりません。 それを拒否したこの論文は数学的に二つの封筒問題を考えたくない人のための論文だと言えます。
この論文の著者が数学者による Nalebuff, Barry.(1989). の冒頭部分しか読んでいないであろうこともわかります。


「厳格な指定子(rigid designator) 」 という用語
(2017/08/05 に追加)
「厳格な指定子(rigid designator) 」 という言葉が出て来ます。
「可能世界(possible world) 」 で議論した式に関連して次のように説明しています。
「交換後の封筒の金額」 という言葉が (上記のおかしな式の) 項によって $2 と $8 の異なる値を指している。 これは 「交換後の封筒の金額」 という言葉が 「厳格な指定子(rigid designator) 」 でないことを示す。

私の注1 :
この部分は 「変数誤用説」 に似ているようで別物です。 渡された封筒の金額でなく交換後の封筒の金額に着目しているからです。

私の注2 :
「交換後の封筒の金額」 という言葉を選んだことが 「厳格な指定子」 でなくなった原因だということにこの論文の著者は気づいていません。 「交換後の封筒の金額」 を 「交換して倍になった後の封筒の金額」や 「交換して半分になった後の封筒の金額」 のように修正すれば済むことです。


「二組の金額ペア妄想説」 と 「変数誤用説」 の中間のような説
この論文の最後に書かれている説を分かりやすく書き直すと次のようになりました。
パラドックスを起こす期待値計算式を再掲する。
他方の封筒の金額の期待値 = 0.5 (0.5 × あなたの封筒の金額の期待値) + 0.5 (2 × あなたの封筒の金額の期待値) = 1.25 × あなたの封筒の金額の期待値
この式はあなたが封筒A を渡されたとあなたが知っている場合には正当だが、封筒B を渡されたと知っている場合や、どちらを渡されたかを知らない場合には正当でない。

ここで、あなたの封筒の金額を s と置くと次のようになる。
渡された封筒 この式の診断結果
封筒A 他方の封筒の金額の期待値が 1.25 s なので、この式は正当である。 この部分は 「二組の金額ペア妄想説」 に近いと思います。
封筒B この式の第1項が正しいのは封筒B に 2s が入っている場合で、第2項が正しいのは封筒B に 0.5 s が入っている場合である。 この部分は 「変数誤用説」 に近いと思います。

この診断により、すべてのパズルが解けた。

私の注1 :
この論法はこの論文を引用している 「ある論文」 の論法によく似ています。

私の注2 :
この論文が英語版 Wikipedia の記事 "Two envelopes problem" の初期の編集者に影響を与えたことはなさそうです。 ( "Two envelopes problem" の 2005年当時の参考文献に含まれていない)
しかし、変数誤用説の発生に、Nalebuff, Barry.(1989). が重要な役割を演じたという私の説を補強するものだと思います。
こんなややこしい論文のきっかけになった Nalebuff, Barry.(1989). はつくづく罪作りな論文だと思います。


この論文は二分の三説を唱えていない
1.25 という数字はこの論文に出てきますが、1.5 も 3/2 も出てこないことから、この論文で二分の三説を唱えていないことがわかります。
封筒Bの金額ごとに二分の三説を適用して平均した値である 1.125 ( = 9/8 = (1/2)((3/2)(s/2) + (3/2)s)/s ) も出てきません。

私の注 :
この論文のように確率 1/2 を疑わない論文で二分の三説を唱えていないものは極めてまれだと思います。
ちなみに、この論文を引用している 「ある論文」 では二分の三説を唱えています。


参考文献

用語解説



トップページに戻る