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論文などで 「変数誤用説」 を唱える人たちが読んだ問題文や、 Wikipedia(各言語) での 「変数誤用説」 の扱われ方などを調べてみました。
調べた事例が少ないので結論は言えませんが、予想したとおり 変数誤用説を唱える論文の冒頭で 「封筒を開ける前に交換型」 の問題文が使われていました。
ちなみに、数学者でありながら変数誤用説を唱えている人を、私は一人しか知りません。 (← 2014/05/05 に 「見たことがない」 から 「一人しか知らない」 に訂正しました)
数学者が 変数誤用説 を唱えないのは 「封筒を開けてから交換型」 で二つの封筒問題を知ったからではなさそうです。
下の表がその結果です。
一組の金額ペアを考える方法も採用している Wikipedia の記事が必ずしも変数誤用説を唱えているとは限らないことや、上ではご紹介しませんでしたが、自分の WEBページで一組の金額ペアだけを考えながら変数誤用説を唱えていない人もいることから、単一金額ペアに固執する人が変数誤用説を唱えるようになるまでに次のような二つの段階があるような気がします。
さらに、2015年3月29日に、私は別の説を思いつきました。
次のような理由から 「財布のゲーム」 の時代には変数誤用説を唱える人はいなかったろう、と私は思います。「財布のゲーム」 での 「変数誤用説」 は次のような形式になります。
しかし、この文章の中の 「確率 1/2 で勝ちそうな金額」 と 「確率 1/2 で勝ちそうな金額」 は二つの封筒問題のようには明確ではありません。
次に示すような、二つの封筒問題と 「財布のゲーム」 との最大の違いが効いているのだと思います。
このようなわけで、変数誤用説を唱える人が出てくるのは、二つの封筒問題の時代に入ってからのことだと思います。 具体的には、Nalebuff, Barry. (1988). の前後からだと思います。
Christensen, R; Utts, J (1992), では、選らんだ封筒の金額を条件として期待値を計算する方法と、金額ペアを条件として期待値を計算する方法を比較しているので、この論文が書かれた以前に、変数誤用説を唱える人、 あるいは 「単一金額ペアへの固執」 のまま論文を書いた人、 などが出現していたのだと思います。
しかし 「開けてから交換型」 の問題文も、「もう一つのパラドックス (A Second Paradox)」 として残されていて、変数誤用説では解決できないことが書かれています。
その後、INic さんによる 02:35, 8 October 2005 の版で "Second Paradox" の項の表題が "A harder problem" に変えられました。
余談:
02:35, 8 October 2005 の版でも、二つの封筒問題の初心者が読むにふさわしいまとまり方をしていますが、18:32, 25 October 2005 の版になると参考文献も充実しているので、初心者が Wikipedia(英語版) の "Two envelopes Problem" の記事を読むなら、この時期の記事を読むことをお勧めします。
128.113.65.168 さんによる 18:42, 8 October 2008 の版で、"A harder problem" の項がとうとう消されてしまいました。
「封筒を開ける前に交換」 型の問題の封印による 「二封筒問題のおまじないの王様」 の支配です。
その後は、冒頭の問題文に重大な変化が無いかというと、そうではなく、「封筒を開ける前に交換型」か「封筒を開けてから交換型」か、あいまいな問題文になった時期もあります。
「二封筒問題のおまじないの王様」 の支配が続いていたかというとそうでもなくて、私がたまたま見つけた 01:40, 31 March 2010 の版では、「封筒を開けてから交換型」の場合、確率値が 1/2 の方が誤っているとしていました。つまり、明確に 「変数誤用説」 と逆の 「確率の錯覚説」 を唱えていた時期もあったわけです。
その後も紆余曲折が色々あったと思うので、一気に 01:06, 5 April 2014 の版を調べてみると、"Alternative interpretation" の項で 「封筒を開けてから交換型」 が復権していましたが、冒頭の問題文と "Problem" の項は 「封筒を開ける前に交換型」 で、それに続く "Common resolution" の項は 「変数誤用説」 でした。
2014/04/27 に以下を書き足しました。
Wikipedia(英語版) の "Two envelopes Problem" の記事 (01:06, 5 April 2014 の版) を良く読むと、次のようなことがわかりました。
2014/11/22 に下記を書き直しました。
2014年の5月ごろ Tsikogiannopoulos, Panagiotis.(2014). に載っている奇妙な期待値計算式を "Alternative interpretation" の項に書き加えようとた人が INic さんと2014年の10月ごろ エディット戦争を繰り広げていましたが、現在 (2014/11/22) は、その妙な計算式が書き込まれてしまった状態です。
時期によって変化があるので、履歴を調べなければはっきりしませんが、冒頭の 「封筒を開ける前に交換型」 の問題文や "Problem" の項と、 それに続く 「変数誤用説」 の "Common resolution" の項の三点セットが記事の先頭を占め、その後に 「条件付き期待値」 の "Alternative interpretation" の項が続くという構成が長く続いているような気がしていたのですが、 2014年の10月ごろ、私はその理由を悟りました。
Wikipedia(英語版)の"Two envelopes problem" の記事の 2014年10月ごろの版の構成は、 INic さんによる 18:32, 25 October 2005 の版の構成と同一と言ってよいほど似ています。 今まで INic さんが熱心にメンテナンスして来たから記事全体の構成が維持されて来たのだろうと、私は推測します。
余談:
日本に比べて欧米の方が「封筒を開ける前に交換型」を論じる人が多い理由の一つが、このWikipedia の記事の内容にあるのかも知れません。 (どちらの二封筒問題がメジャーか)
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2015/03/29 13:56:07
初版 2014/04/13
変数誤用説の起源
2014/11/23 に、Wikipedia(英語版) だけでなく、各言語の Wikipedia での 「変数誤用説」 の使われ方の比較表を組み込みました。 それに伴い、Wikipedia(英語版) での 「変数誤用説」 の扱われ方の変遷に関する記述を付録の方に移しました。論文などで 「変数誤用説」 を唱える人たちが読んだ問題文や、 Wikipedia(各言語) での 「変数誤用説」 の扱われ方などを調べてみました。
変数誤用説を唱えたり単一金額ペアに固執したりしている哲学者や心理学者による論文の場合
「変数誤用説」 を唱えたり、 「単一金額ペアへの固執」 から抜け出せない人は 「封筒を開ける前に交換型」 の問題文でこのパラドックスを知ったという予想を確かめてみました。論文 | 単一金額ペアに固執しているか | 変数誤用説を唱えているか | 論文冒頭の問題文 |
---|---|---|---|
Jackson, F., P. Menzies and G. Oppy (1994), |
微妙 注参照 '14/11/22 修正 |
いない |
開ける前に交換型 途中で '14/11/22 修正 |
Clark, Michael. & Shackel, Nicholas. (2000). |
いる 注参照 |
いない | 開ける前 |
Falk, Ruma (2008). |
いる | いる | 開ける前 |
注 : Jackson, F., P. Menzies and G. Oppy (1994), の冒頭で 「封筒を開ける前に交換型」 の問題に対して、$x と $2x の一組の金額ペアだけを考えるとパラドックスが解消すると述べているので、「単一金額ペアへの固執」 に近いのですが、選らんだ封筒の金額 $x に対して他方が $0.5x である確率と $2x である確率が等しい保障はないという風に二組の金額ペアに着目した説明もしているので、単一金額ペアに固執しているわけではなさそうです。
後半で 「アリババ型」 の問題の変形 (印付の封筒に入れてから確率半々でもう一方に半額または倍額を入れる。開けてから交換する) も論じています。
← 2014/05/25 にこの注を追加。 2014/11/22 に修正
後半で 「アリババ型」 の問題の変形 (印付の封筒に入れてから確率半々でもう一方に半額または倍額を入れる。開けてから交換する) も論じています。
← 2014/05/25 にこの注を追加。 2014/11/22 に修正
注 : Clark, Michael. & Shackel, Nicholas. (2000). では、「変数誤用説」 を唱えていませんが、パラドキシカル分布 の場合に同一の金額ペアごとに級数の項をグルーピングすれば二つの封筒の同等性を確認できることを重要視しているので、 「単一金額ペアへの固執」 に似ていると思います。 ← 2014/05/25 にこの注を追加
注 : Eric Schwitzgebel and Josh Dever による Webページ
"The Two Envelope Paradox and Using Variables Within the Expectation Formula" を、 この表から 2014/05/18 に削除しました。 「変数誤用説」 に似ていても別物であることに気付いたからです。
調べた事例が少ないので結論は言えませんが、予想したとおり 変数誤用説を唱える論文の冒頭で 「封筒を開ける前に交換型」 の問題文が使われていました。
「封筒を開ける前に交換型」 の問題文を使っている数学者の場合
数学の得意な人は、たとえ 「封筒を開ける前に交換型」 の問題文を最初に知っても、変数誤用説を唱えたりしないという予想を確かめてみました。ちなみに、数学者でありながら変数誤用説を唱えている人を、私は一人しか知りません。 (← 2014/05/05 に 「見たことがない」 から 「一人しか知らない」 に訂正しました)
論文 | 単一金額ペアに固執しているか | 変数誤用説を唱えているか | 論文冒頭の問題文 | 備考 |
---|---|---|---|---|
Nalebuff, Barry.(1989). | いない | いない | 開けてから交換型 |
冒頭の問題文は、アリさんの封筒にお金を入れてからその倍や半額の金額をババさんの封筒に入れる形式です。 アリババ型二封筒問題は非対称 参照 |
Christensen, R; Utts, J (1992), | いない | いない | 開けてから交換型 | 一組の金額ペアで期待値を計算する式も併記していますが、二組の金額ペアで期待値を計算する方が優れているとしています。 |
Chalmers, D.J. 1994. 職業は哲学者だが 数学オリンピックの銅メダリスト |
いない | いない | あいまい | 引用している Jackson, F., P. Menzies and G. Oppy (1994), の中では 「開ける前に交換型」、「開けてから交換型」の両方を論じています。 |
Broome,John.(1995). | いない | いない | 開ける前に交換型 | |
Bruss, F.T. (1996). 2014/11/15 にこの行を追加 |
いる | いる | 開ける前に交換型 | 開ける前に交換型の問題文を論じているらしいことが、この論文を引用している Bliss, Eric. 2012. を読むと、わかります。 |
Norton, J.D. 1998. | いない | いない | 開ける前に交換型 | |
Wagner, Carl G.(1999). | いない | いない | 開ける前に交換型 |
変数ではなく確率数値 |
数学者が 変数誤用説 を唱えないのは 「封筒を開けてから交換型」 で二つの封筒問題を知ったからではなさそうです。
Wikipedia(各言語) での 「変数誤用説」 の扱われ方
2014年7月に、各言語の Wikipedia の記事を調べてみました。下の表がその結果です。
注
読めない外国語の記事を自動翻訳ソフトを使って調べたので必ずしも正確ではありません。
読めない外国語の記事を自動翻訳ソフトを使って調べたので必ずしも正確ではありません。
言語 |
記事の見出し (リビジョン) |
閉じたまま交換か 開けてから交換か |
パラドックスの存在を示す箇所での金額の表し方 |
単一の金額ペアのみを考えながら二つの封筒の同等性を説明しているか |
変数誤用説を唱えているか | 二つの金額ペアを考えながらパラドックスを解消する方法を示しているか |
---|---|---|---|---|---|---|
Deutsch |
"Die Umtauschsituation' in the article "Umtauschparadoxon" (am 14. Juni 2014 um 08:43) |
開けてから |
|
NO | – | YES |
English |
"The Two envelopes problem" (21:21, 14 July 2014) |
開ける前 |
|
YES | YES | YES |
Français |
"Paradoxe des deux enveloppes" (du 23 avril 2014 à 18:53) |
開ける前 |
|
YES | YES ? | NO |
Italiano |
"Paradosso delle due buste" (5 lug 2013 alle 13:01) |
開けてから |
|
YES | YES ? | YES |
Magyar |
Kétborítékos paradoxon (2013, március 8, 11:10) |
開けてから |
|
YES | YES | YES |
Nederlands |
"Enveloppenparadox" (op 13 feb 2014 18:33.) |
開ける前 |
|
YES | NO ? | YES |
Русский |
"Задача о двух конвертах" (14:19, 10 июля 2014) |
Open |
|
NO | – | YES |
変数誤用説を唱えるまでの道筋
2014/11/23 にこの項を追加しました。一組の金額ペアを考える方法も採用している Wikipedia の記事が必ずしも変数誤用説を唱えているとは限らないことや、上ではご紹介しませんでしたが、自分の WEBページで一組の金額ペアだけを考えながら変数誤用説を唱えていない人もいることから、単一金額ペアに固執する人が変数誤用説を唱えるようになるまでに次のような二つの段階があるような気がします。
ステップ | 二組の金額ペアも考えることのできる人 | 一組の金額ペアしか考えられない人 |
---|---|---|
ゲームのルールを読む |
一組の金額ペアを思い浮かべる |
一組の金額ペアを思い浮かべる |
パラドックスが存在するという説明を読む | 頭の中で二組の金額ペアに切り替える | 頭の中で二組の金額ペアに切り替えることができない |
考察 |
ある人は確率を疑う ある人はゲームを繰り返すことを考える E.T.C |
期待値計算式を疑う |
段階 1 期待値計算式が根本的に間違っていると見なす |
||
なぜ、他の人がパラドックスを感じるのか不思議がる | ||
段階 2 変数誤用説を唱える |
さらに、2015年3月29日に、私は別の説を思いつきました。
ステップ | 二組の金額ペアも考えることのできる人2 |
---|---|
ゲームのルールを読む |
一組の金額ペアを思い浮かべる |
パラドックスが存在するという説明を読む | 頭の中で二組の金額ペアに切り替える |
考察 |
確率を疑えない。 |
段階 1 単一の金額ペアだけで期待値を計算すればパラドックスが解消されることに気づいて、二組の金額ペアを考えることがパラドックスの原因だと勘違いする |
|
一度は期待値計算式を受け入れたことに矛盾を感じる | |
段階 2 自らの説を正当化するために変数誤用説を唱える |
変数誤用説はいつごろ出現したか
2014/05/25 にこの項を追加しました。次のような理由から 「財布のゲーム」 の時代には変数誤用説を唱える人はいなかったろう、と私は思います。「財布のゲーム」 での 「変数誤用説」 は次のような形式になります。
自分の財布の金額を固定して考えたりするから、勝ちそうな確率 1/2 と負けそうな確率 1/2 と組み合わせるとパラドックスが起こるのだ。
確率 1/2 で勝ちそうな金額と、確率 1/2 で勝ちそうな金額が異なることを考慮しなければならない。
確率 1/2 で勝ちそうな金額と、確率 1/2 で勝ちそうな金額が異なることを考慮しなければならない。
しかし、この文章の中の 「確率 1/2 で勝ちそうな金額」 と 「確率 1/2 で勝ちそうな金額」 は二つの封筒問題のようには明確ではありません。
次に示すような、二つの封筒問題と 「財布のゲーム」 との最大の違いが効いているのだと思います。
二つの封筒問題では、二つの封筒の中から一つの封筒を選ぶというステップがあるが、「財布のゲーム」 には二つの財布から一つの財布を選ぶというステップはない。
このようなわけで、変数誤用説を唱える人が出てくるのは、二つの封筒問題の時代に入ってからのことだと思います。 具体的には、Nalebuff, Barry. (1988). の前後からだと思います。
Christensen, R; Utts, J (1992), では、選らんだ封筒の金額を条件として期待値を計算する方法と、金額ペアを条件として期待値を計算する方法を比較しているので、この論文が書かれた以前に、変数誤用説を唱える人、 あるいは 「単一金額ペアへの固執」 のまま論文を書いた人、 などが出現していたのだと思います。
付録
Wikipedia(英語版) の "Two envelopes Problem" の記事の変遷
初版
この記事の初版はJohnTheSecure さんが 22:36, 25 August 2005 に投稿した版ですが、 「開けてから交換型」 の問題文を示すのみで、パラドックスかどうかすら書かれていません。変数誤用説が初めて出た版
INic さんが投稿した 22:05, 3 October 2005 の版で冒頭の問題文が 「開ける前に交換型」 に置き換わると同時に、初めて 「変数誤用説」 が登場します。しかし 「開けてから交換型」 の問題文も、「もう一つのパラドックス (A Second Paradox)」 として残されていて、変数誤用説では解決できないことが書かれています。
その後、INic さんによる 02:35, 8 October 2005 の版で "Second Paradox" の項の表題が "A harder problem" に変えられました。
余談:
02:35, 8 October 2005 の版でも、二つの封筒問題の初心者が読むにふさわしいまとまり方をしていますが、18:32, 25 October 2005 の版になると参考文献も充実しているので、初心者が Wikipedia(英語版) の "Two envelopes Problem" の記事を読むなら、この時期の記事を読むことをお勧めします。
変数誤用説が前面に出された版
128.113.65.168 さんによる 17:57, 8 October 2008 の版で、「封筒を開ける前に交換型」 の Proposed solution の項の中の 「that ''A'' isn’t a constant in the expected value calculation」 という言い回しが 「that A is used inconsistently in the expected value calculation」 という言い回しに変えられました。128.113.65.168 さんによる 18:42, 8 October 2008 の版で、"A harder problem" の項がとうとう消されてしまいました。
「封筒を開ける前に交換」 型の問題の封印による 「二封筒問題のおまじないの王様」 の支配です。
その後の変化
2014/04/13 にこの項を追加しました。初版の当日ですが…その後は、冒頭の問題文に重大な変化が無いかというと、そうではなく、「封筒を開ける前に交換型」か「封筒を開けてから交換型」か、あいまいな問題文になった時期もあります。
「二封筒問題のおまじないの王様」 の支配が続いていたかというとそうでもなくて、私がたまたま見つけた 01:40, 31 March 2010 の版では、「封筒を開けてから交換型」の場合、確率値が 1/2 の方が誤っているとしていました。つまり、明確に 「変数誤用説」 と逆の 「確率の錯覚説」 を唱えていた時期もあったわけです。
その後も紆余曲折が色々あったと思うので、一気に 01:06, 5 April 2014 の版を調べてみると、"Alternative interpretation" の項で 「封筒を開けてから交換型」 が復権していましたが、冒頭の問題文と "Problem" の項は 「封筒を開ける前に交換型」 で、それに続く "Common resolution" の項は 「変数誤用説」 でした。
2014/04/27 に以下を書き足しました。
Wikipedia(英語版) の "Two envelopes Problem" の記事 (01:06, 5 April 2014 の版) を良く読むと、次のようなことがわかりました。
- "Alternative interpretation" の項で期待値計算式の中の記号を通常の 「変数」 だと解釈して 「条件付き期待値」 を計算するるスタンスの方が、数学的文献では、より一般的だとしている。
- 「封筒を開ける前に交換型」 の "Problem" の項の記述量と、 期待値計算式の中の記号を 「確率変数」 と解釈するスタンス、すなわち、「変数誤用説」 で書かれている "Common resolution" からまでの記述量を加えても、「変数誤用説」 とは異なるスタンスで書かれている "Alternative interpretation" の記述量よりずっと少ない。
· · · 後者にはパラドキシカル分布の議論や期待効用に関する議論も含まれているので、当然かも知れませんが · · ·
2014/11/22 に下記を書き直しました。
2014年の5月ごろ Tsikogiannopoulos, Panagiotis.(2014). に載っている奇妙な期待値計算式を "Alternative interpretation" の項に書き加えようとた人が INic さんと2014年の10月ごろ エディット戦争を繰り広げていましたが、現在 (2014/11/22) は、その妙な計算式が書き込まれてしまった状態です。
まとめ
2014/04/13 に大幅な修正をしましたが、2014/11/15 にも修正を行いました。時期によって変化があるので、履歴を調べなければはっきりしませんが、冒頭の 「封筒を開ける前に交換型」 の問題文や "Problem" の項と、 それに続く 「変数誤用説」 の "Common resolution" の項の三点セットが記事の先頭を占め、その後に 「条件付き期待値」 の "Alternative interpretation" の項が続くという構成が長く続いているような気がしていたのですが、 2014年の10月ごろ、私はその理由を悟りました。
Wikipedia(英語版)の"Two envelopes problem" の記事の 2014年10月ごろの版の構成は、 INic さんによる 18:32, 25 October 2005 の版の構成と同一と言ってよいほど似ています。 今まで INic さんが熱心にメンテナンスして来たから記事全体の構成が維持されて来たのだろうと、私は推測します。
余談:
日本に比べて欧米の方が「封筒を開ける前に交換型」を論じる人が多い理由の一つが、このWikipedia の記事の内容にあるのかも知れません。 (どちらの二封筒問題がメジャーか)
参考文献
-
Bliss, Eric. 2012.
A Concise Resolution to the Two Envelope Paradox
-
Broome,John.(1995).
The Two-envelope Paradox, Analysis 55(1): 6–11.
-
Bruss, F.T. (1996).
The Fallacy of the Two Envelopes Problem.
The Mathematical Scientist 21 (2): 112–119.
-
Chalmers, D.J. 1994.
The two-envelope paradox: A complete analysis?
-
Christensen, R; Utts, J (1992),
Bayesian Resolution of the "Excehange Paradox"
The American Statistician, Vol.46,No.4.(Nov.,1992),pp.274–276.
-
Clark, Michael. & Shackel, Nicholas. (2000).
The Two Envelope Paradox, Mind Magazine (Vol 109.435.July 2000)
-
Jackson, F., P. Menzies and G. Oppy (1994),
The Two Envelope 'Paradox'
Analysis 54. 43–45
-
Falk, Ruma (2008).
The Unrelenting Exchange Paradox. Teaching Statistics 30 (3): 86–88.
-
Nalebuff, Barry. (1988).
Puzzles: Cider in Your Ear, Continuing Dilemma, The Last Shall be First, More.
Journal of Economic Perspectives, 2(2): 149–156.
-
Nalebuff, Barry.(1989).
The other person'S envelope is always greener. Jounal of Economic Perspectives 3 (1989) 171-181.
-
Norton, J.D. 1998.
When the sum of our expectations fails us: The exchange paradox.
Pacific Philosophical Quarterly 79:34–58.
-
Tsikogiannopoulos, Panagiotis.(2014).
Variations on the Two Envelopes Problem
Hellenic Mathematical Society Mathematical Review 77-78 (2014)
-
Wagner, Carl G.(1999).
Misadventures in Conditional Expectation: The Two-Envelope Problem
Erkenntnis, Vol.51, No.2/3 (1999), pp.233–241
用語解説
-
確率の錯覚
二つの封筒問題で封筒を交換した後の金額の期待値を計算するときに起こす、次のような錯覚現象です。
金額ペア(A, 2A) の A が確率1/2 で自分の封筒に入っている。2A も確率1/2 で自分の封筒に入っている。 だから自分の封筒の金額を X とすると、 もう一つの封筒にX/2 が入っている確率も、2X が入っている確率も、 どちらも1/2 だ。
このように、(X/2, X) と (X, 2X) という二組の金額ペアを考えるときに、一組の金額ペア(A, 2A) を考えていたときの確率をそのまま当てはめてしまう現象です。
-
変数誤用説
私の造語です。
「封筒を交換した後の金額の期待値を計算する½ × (x/2) + ½ × 2x という式の左の x は交換して半減するときの値を表し、右の x は交換して倍増するときの値を表していて、同じ変数が別の値を表しているから、おかしな計算結果になるのだ」
という説を指します。
二封筒問題のおまじないの王様 – 変数誤用説 – の中核部分に当たります。
-
単一金額ペアへの固執
私の造語です。
封筒にお金が入れられた後では、封筒の中身の金額ペアが一種類に決まっているというイメージに囚われて、期待値を計算するときにも、一種類の金額ペアしか考えられない心理現象です。
この心理現象が起きると、手持ちの封筒の金額を x円に対して、(x円/2, x円) と(x円, 2x円) の二組の金額ペアを考えられなくなります。
-
パラドキシカル分布
選んだ封筒の金額を条件とする条件付き期待交換利得が常にゼロより大であるような金額分布を言います。
このような場合、封筒を開ける前の二つの封筒が互角であることと矛盾しないのか? と不思議になります。
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