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「非条件付確率の問題設定」や、「不特定事象による条件付確率あるいは事後確率の問題設定 」をとった場合、
と述べれば充分である。
「特定事象による条件付確率あるいは事後確率の問題設定」をとった場合、
と述べれば充分である。
しかしいくら説明されて頭で理解しても心で納得できないために、これらの説明が不十分なのだと錯覚してしまい、もっとましな説明があるはずだと、あれこれ考え始めるのである。
わたしも、もっと分りやすい説明を考案しようと苦心したり、他の人がわかりやすい説明を編み出しているのではないかと、インターネットで調べて見たりもした。
その結果、下記に示すようなさまざまな解答や説明を見つけたが、これらを読んだり理解したりしても、不思議さはなくならない。
不思議さは無意識の錯覚の働きによるものなので、いくら頭で理解しても無駄なのである。
Marilyn vos Savantの著書"The Power of Logical Thinking"(vos Savant, Marilyn (1996).)の中で同様な解答が紹介されている。
平成21年度中学3年学力テストでも、同様な解答を求めている。
「自動車」を「恩赦」、「ヤギ」を「処刑」と読み替えれば、3囚人問題に対しても同様な解答が可能である。
switch するかしないかの記述と、扉が当りかどうかの既述の順序を逆転させた表現もある。
「選んだ扉がハズレの確率が switch して賞品を獲得する確率と等しいことをやや丁寧に述べる解答」 と中身は変わらないが、決定木の見方を知らない人には分かり難い。
「変わりがない」という言い回しから、「不特定事象による条件付確率あるいは事後確率の問題設定 」のようであるが、stay の決心を扉が開けられる前に行っているので、「非条件付確率の問題設定」に含めるべきだろう。
以下、この説明を 「開ける前に switch 決心説」 と呼ぶことにする。
この説明には Adams, Cecil (1990).が友人の助言のもとに考えた説明 ( このページの 「Ⅲ.似たような別の問題になぞらえるタイプの例」 で紹介 ) と似たところがある。
また、この説明とよく似た考え方が、DOFI さんが作った人気のページ 「ネコでもわかるモンティホールジレンマ」 の中の説明の一つで使われている。(2012年01月09日現在)
3囚人問題の場合には意思決定の要素がないため、このような解答は成立しない。
"Ask Marilyn"での論争における、1990年12月のMarilyn vos Savant の解答は、ここに上げた表とほぼ同じものである。(vos Savant, Marilyn (1990b).)
「行動経済学 経済は「感情」で動いている」 (友野典男 著) 2006年5月初版 や、2003年出版のMark Haddon の小説。"the curious incident of the dog in the night-time"でも、説明に使われている。
NHK「ためしてガッテン」の平成23年の7月の放送でも、同様な図を使って説明がなされている状況を、インターネットの画像検索で見ることができる。
この表は一見すると場合分けの表のように見えるが、下のように扉のパターンの部分を図に書き換えることができるので、純然たる場合分けの表でないことがわかる。
Yahoo!知恵袋などのインターネットのQAサイトでは、マトリックスを次のように文字だけで表現する例もある。(初めて見たとき非常に感心しました)
注:
2013/08/21 23:22:41
わかりやすい説明を探しあぐねて
モンティ・ホール問題 (モンティホールジレンマ) の答えは元来、簡単なものである。「非条件付確率の問題設定」や、「不特定事象による条件付確率あるいは事後確率の問題設定 」をとった場合、
挑戦者が選ばなかった扉が当たりの確率 2 / 3 が switch して賞品を得る確率である |
と述べれば充分である。
「特定事象による条件付確率あるいは事後確率の問題設定」をとった場合、
2013/08/21 に表現を一部修正しました。 挑戦者が扉1を選んだならば、 扉1が当りのときにホストが扉3を開ける確率は 1 / 2 で、扉2が当りのときにホストが扉3を開ける確率は 1 だから、 ホストが扉3を開けたときには 「扉1が当り」 より 「扉2が当り」 の方が2倍、起きていやすいので、 扉2が当たりの確率は |
と述べれば充分である。
しかしいくら説明されて頭で理解しても心で納得できないために、これらの説明が不十分なのだと錯覚してしまい、もっとましな説明があるはずだと、あれこれ考え始めるのである。
わたしも、もっと分りやすい説明を考案しようと苦心したり、他の人がわかりやすい説明を編み出しているのではないかと、インターネットで調べて見たりもした。
その結果、下記に示すようなさまざまな解答や説明を見つけたが、これらを読んだり理解したりしても、不思議さはなくならない。
不思議さは無意識の錯覚の働きによるものなので、いくら頭で理解しても無駄なのである。
ちまたで見かける「非条件付確率の解答」
Ⅰ.挑戦者が選んだ扉が当たりの事象と、 その余事象に場合分けするタイプの例
◇ 選んだ扉がハズレの確率が switch して賞品を獲得する確率と等しいことをやや丁寧に述べる解答
switch しなければ最初に選んだ扉が当たりのときしか勝てないが、 switch すれば最初に選ばなかった扉2枚のどちらかが当たりなら勝てるので、 switch する方が2倍有利である。 |
Marilyn vos Savantの著書"The Power of Logical Thinking"(vos Savant, Marilyn (1996).)の中で同様な解答が紹介されている。
平成21年度中学3年学力テストでも、同様な解答を求めている。
「自動車」を「恩赦」、「ヤギ」を「処刑」と読み替えれば、3囚人問題に対しても同様な解答が可能である。
switch するかしないかの記述と、扉が当りかどうかの既述の順序を逆転させた表現もある。
選んだ扉がハズレなら、switch すると勝てるが、 選んだ扉が当りなら switch すると負ける。 選んだ扉がハズレの確率は 2 / 3 だから、 switch すると勝てる確率は 2 / 3 である。 |
◇ 選んだ扉がハズレの確率が switch して賞品を獲得する確率と等しいことをデシジョン・ツリーで図解する方法
Wikipedia(日本語版) の 「決定木」 の記事 (2013年3月20日 (水) 00:29版) の図を参考にして図を画くと次のようになる。「選んだ扉がハズレの確率が switch して賞品を獲得する確率と等しいことをやや丁寧に述べる解答」 と中身は変わらないが、決定木の見方を知らない人には分かり難い。
◇ switch するかしないかの意思決定をホストが扉を開ける前に行う場合に着目した解答
ホストが扉を開く前に stay する決心をしたとすると、 ホストがどの扉を残したかの影響を受けることができないので、 ホストが扉を開ける前の時点の賞品を獲得する確率 1 / 3 から変わりがない。 |
「変わりがない」という言い回しから、「不特定事象による条件付確率あるいは事後確率の問題設定 」のようであるが、stay の決心を扉が開けられる前に行っているので、「非条件付確率の問題設定」に含めるべきだろう。
以下、この説明を 「開ける前に switch 決心説」 と呼ぶことにする。
この説明には Adams, Cecil (1990).が友人の助言のもとに考えた説明 ( このページの 「Ⅲ.似たような別の問題になぞらえるタイプの例」 で紹介 ) と似たところがある。
また、この説明とよく似た考え方が、DOFI さんが作った人気のページ 「ネコでもわかるモンティホールジレンマ」 の中の説明の一つで使われている。(2012年01月09日現在)
3囚人問題の場合には意思決定の要素がないため、このような解答は成立しない。
Ⅱ.3つの扉それぞれが当たりである場合に場合分けするタイプの例
◇ 扉と賞品の組合せ表による解答
挑戦者が扉1を選んだとする。
3つのケースのうち2ケースで switch すると自動車を得るので、switch して自動車を獲得する確率は 2 / 3 となる。
扉1 | 扉2 | 扉3 | switch の結果 | |
---|---|---|---|---|
自動車 | ヤギ | ヤギ | ヤギ | |
ヤギ | 自動車 | ヤギ | 自動車 | |
ヤギ | ヤギ | 自動車 | 自動車 |
3つのケースのうち2ケースで switch すると自動車を得るので、switch して自動車を獲得する確率は 2 / 3 となる。
"Ask Marilyn"での論争における、1990年12月のMarilyn vos Savant の解答は、ここに上げた表とほぼ同じものである。(vos Savant, Marilyn (1990b).)
「行動経済学 経済は「感情」で動いている」 (友野典男 著) 2006年5月初版 や、2003年出版のMark Haddon の小説。"the curious incident of the dog in the night-time"でも、説明に使われている。
NHK「ためしてガッテン」の平成23年の7月の放送でも、同様な図を使って説明がなされている状況を、インターネットの画像検索で見ることができる。
この表は一見すると場合分けの表のように見えるが、下のように扉のパターンの部分を図に書き換えることができるので、純然たる場合分けの表でないことがわかる。
挑戦者が扉1を選んだとする。
3つのケースのうち2ケースで switch すると自動車を得るので、switch して自動車を獲得する確率は 2 / 3 となる。 |
Yahoo!知恵袋などのインターネットのQAサイトでは、マトリックスを次のように文字だけで表現する例もある。(初めて見たとき非常に感心しました)
〇×× | 〇× ×〇× | ×〇 ××〇 | ×〇 |
この図の | の左が事前確率の世界で、右が事後確率の世界だと解釈したとしたら、証拠事象による標本空間の絞り込みが行われているので、 非条件付確率の問題設定 の説明図でなく、 不特定事象による条件付確率あるいは事後確率の問題設定 の説明図になる。
数学の論文などでは、次のように文字配列のパターンを並べて書くだけの形式もある。
AGG, GAG, GGA |
舞台の上の挑戦者や扉、そして扉の裏の賞品を上の方から俯瞰したような立体図で表現するやり方もある。
「自動車」を「恩赦」、「ヤギ」を「処刑」と読み替えれば、3囚人問題に対しても同様な解答が可能である。
Ⅲ.似たような別の問題になぞらえるタイプの例
「Ⅰ.挑戦者が選んだ扉が当たりの事象と、 その余事象に場合分けするタイプの例」 の余事象の部分を具体的にイメージさせようとしている説明方法がある。◇ 挑戦者が選んだ扉と残りの2つの扉との交換をホストが提案するゲームと等価だとする説明
例として、Adams, Cecil (1990).が友人の助言のもとに考えた説明をあげる。
次のように仮定してください。 あなたは扉1を選びます、 すると、あなたは扉1を開けるか、扉2と扉3の両方を開けるか、選択の機会が与えられます。 後者を選んだ場合、どちらかの扉に賞品があれば、それが手に入ります。 あなたは扉二つの方を選ぶでしょう? オリジナルの問題でも同等の機会が与えられています。 (オリジナルの問題では)あなたにモンティが、 「あなたの扉をキープしてもよいし、残りの二つに替えてもよい。 私は残りの二つの中からハズレの扉を一つ開けて上げよう。」と言ったのと同じだからです。 これでわかりましたか? |
Wkipedia(英語版)の"Monty Hall problem"の記事(2012年4月22日 2136の版)で、挑戦者が選ばなかった扉を一つに合体させる考え方の例としてこの説明を引用している。
以下、この説明を 「開ける前に switch 説」 と呼ぶことにする。
「開ける前に switch 決心説」 とよく似ているが、こちらは本当に開ける前に switch してしまう。
「開ける前に switch 説」 を詳しく調べると本来のモンティ・ホール問題と以下の点で異なっている。
扉の間の対称性に着目して 特定事象による条件付確率あるいは事後確率の問題設定 と 非条件付確率の問題設定 の関係を議論することもモンティ・ホール問題の楽しみの一つであるが、「開ける前に switch 説」 のようにゲームそのものを変えてしまっては、 そういう議論ができない。
挑戦者が当たりを選んだときに残りのはずれ扉のどちらを開けるかというホストのくせに影響されないからである。
2013/06/28 に 「◇ 挑戦者が選ばなかった扉を合体させるゲームと等価だとする説明」 を 「ちまたで見かける「不特定事象による条件付確率あるいは事後確率の解答」」 の方に移動しました。
Ⅳ.シミュレーションして確かめようとするタイプの例
説明を理解しても納得できない人がコンピュータプログラムを書けるとき必ずやる方法である。私も Excel の関数を使ってシミュレーションしたことがあるので気持ちがわかる。
ブログなどで見かけるコードは、大概、非条件付確率の問題設定 でシミュレーションしている。 (ホストが開けた扉毎に集計して 特定事象による条件付確率あるいは事後確率の問題設定 でシミュレーションするコードは見たことがない)
中にはコードを書いているうちに、扉を switch した方が2倍当りやすいことを確認した人もいる。
扉を switch した方が2倍当りやすいことをシミュレーションで確認しても、不思議さが消えないと嘆いている人が多い。
ちまたで見かける「不特定事象による条件付確率あるいは事後確率の解答」
モンティ・ホール問題は事後確率の問題であるという立場に立ちながら、素朴な確率概念で理解できる解答をあれこれ工夫している人の中に、ホストが開ける扉をどれかの扉に特定化せずに、不特定な証拠事象の下で事後確率を説明しようとしている人を、インターネット上でたまに見かける。そういう人たちは、事象の独立性の概念を無意識ながらにも使っているらしい。
こうした説明の例を一つ上げる。
◇ ホストが開ける扉がハズレに決まっていることを利用した解答
ホストが開く扉がハズレであることは最初から分かっているので、 ホストがハズレの扉を開いても、最初に選んだ扉で賞品を獲得する確率 1 / 3 は変わらず、 switch すると 1 - (1 / 3) 、すなわち 2 / 3 の確率で勝てる。 |
この解答は「必ず発生することが起きても確率に影響しない」というヒューリスティクに基づいているのだと思われる。
そうしたヒューリスティクは数学的に説明できるものなので、悪くない。
※ 「必ず発生することが起きても確率に影響しない」ことは次のように確かめられる。
事象Bが起きても起きなくても事象Aが必ず発生するという条件で、事象Aを証拠事象とする事象Bの事後確率 P(B|A) を計算すると、
P(B|A) = P(A|B) × P(B) / P(A) = 1 × P(B) / 1 = P(B)
となって、事象Bの事前確率と一致する。
ただし、当たり扉の配置が等確率でないことがわかっていたり、ホストがハズレ扉を開けるときのくせがわかっていたりすると、特定事象による条件付確率あるいは事後確率の問題設定に比べて不特定事象による条件付確率あるいは事後確率の問題設定 が不利になることもあるので、注意が必要である。
Shimojo, S., & Ichikawa, S. (1989). に出て来る "irrelevant, therefore invariant" や Falk, R.(1992). に出てくる "no-news, no-change" を参考にして、 この論法を 「先刻承知確率不変説」 と私は呼ぶことにしている。
この解答の論法は3囚人問題でも使える。
◇ 挑戦者が選ばなかった扉を合体させるゲームと等価だとする説明
2013/06/28 に 「◇ 挑戦者が選ばなかった扉を合体させるゲームと等価だとする説明」 を 「ちまたで見かける「非条件付確率の解答」」 から移動しました。例をあげる。
ホストがはずれの扉を一つ開けて、開いていない扉を一つ残すということは
挑戦者が選ばなかった扉を合体させて一つにすることと等価である。 合体させて一つになった扉は扉二つ分の当たりやすさを持っているから、 合体して一つになった扉に switch して当たる確率は 2/3 だ。 |
「開ける前に switch 説」 と同様にゲームの内容を変えてしまっているので、本来のモンティ・ホール問題との相違点を同様に持っている。
扉の枚数を減らすアクションが含まれているので、本来のモンティ・ホール問題との類似度が 「開ける前に switch 説」 より高くなっている。
以下、この説明を 「扉合体説」 と呼ぶことにする。
モンティ・ホール問題の標準とされている 世界的モンティ・ホール問題 では、ハズレの扉にヤギがいるので、もしも switch して当たると自動車にヤギが付いて来てしまう。
このことから、本来のモンティ・ホール問題との相違点がさらに増えていることが分る。
なお、この 「扉合体説」 を後述の 「確率継承説」 と比べた結果を 「扉合体説と確率継承説の比較」 に書きました。
◇ ホストがどちらを開けたか気にしなくてよいとする説明
例をあげる。
ホストが扉を開ける前、 「挑戦者が選ばなかった扉の中に当たりがある」 確率は ホストが扉を開けた後も、 ホストがどちらの扉を開けたか気にしなければ 「挑戦者が選ばなかった扉 (片方開いている) の中に当たりがある」 確率は 「ホストが扉を開けた後に switch して当たる」 ということは、 「ホストが扉を開けた後に挑戦者が選ばなかった扉の中に当たりがある」 ということだから、「ホストが扉を開けた後に switch して当たる」 確率は |
以下、この説明を 「どちらを開けたか気にしない説」 と呼ぶことにする。
この説明は 「扉合体説」 に見かけ上似ているがゲーム自体を変えていないので別ものである。
ちまたで見かける「不特定事象による条件付確率あるいは事後確率の解答」を「特定事象による条件付確率あるいは事後確率の解答」に結びつけようとする解答
「不特定事象による条件付確率あるいは事後確率の解答」を求めてから、「特定事象による条件付確率あるいは事後確率の解答」を導こうとする人がいる。大概は後段で扉の対称性を使っていないので、後述の「確率継承説」の匂いが消えないものが多い。◇ ホストが開ける扉がハズレに決まっていることを利用しつつ、ホストが開けた扉を特定してしまった解答
ホストが開く扉がハズレであることは最初から分かっているので、 ホストがハズレの扉3 を開いても、最初に選んだ扉1 で賞品を獲得する確率 1 / 3 は変わらず、 switch すると 1 - (1 / 3) 、すなわち 2 / 3 の確率で勝てる。 |
上で取り上げた 「ホストが開ける扉がハズレに決まっていることを利用した解答」 によく似ているが、残念なことにホストが開けた扉を特定してしまっている。
扉2 と扉3 の間の対称性に触れていないので、この説明は 「数学的に不完全」、 もしくは「数学的に誤り」 と言わざるを得ない。
この説明の勘違いを 「先刻承知確率不変説の過剰適用」 と私は呼ぶことにしている。
◇Devlin, Keith (July ‐ August 2003). の説明
(あなたが扉Aを選び、ホストが扉Cを開けたとして) 扉を開けることによって、モンティは挑戦者に次のように述べたことになる。 「・・・途中省略・・・ あなたが扉Aで勝つチャンスは 1 / 3 である。 私はそれを変化させなかった。 しかし扉Cを除くことによって、扉Bが賞品を隠している確率が 2 / 3 であることをあなたに示した。」 と。 |
前段の「私はそれを変化させなかった。」のくだりは数学的にかなり端折った表現になっているが、Delvin はちゃんと事象の独立性を考慮しているのだろう。しかし後段の「扉Bが賞品を隠している確率は 2 / 3 に変わった。」の部分は途中の論理が大きく省略されているので、もしかしたら扉の間の対称性を意識せずに、 「先刻承知確率不変説の過剰適用」 や、後述の 「確率継承説」 に基づいて説明しているのかも知れない。
ちまたで見かける「確率継承説」による説明
モンティ・ホール問題は事後確率の問題であるという立場に立ちながら、素朴な確率概念で理解できる解答をあれこれ工夫している人の中に、「確率継承説」 とでも言うべき迷信的な考え方に迷いこんだ人をよく見かける。そのような説明には次のような図が使われることが多い。
わたしも 「確率継承説」 にはまった一人で、挑戦者が選んだ扉が当たりである確率がホストが扉を開ける前後で変わらずに、ホストが開け残した扉に残りの確率が集中することを説明しようとして迷いこみ、しばらく抜け出すことができなかった。
しかし、この説明方法は数学的に間違いであるか、重大な説明不足によるものであり、「おまじない」 に分類すべきものである。
「確率継承説」 を モンティ・ホール問題のおまじないでも取り上げ、さらに、確率継承説の間違いで詳しく論じています。
文献
-
Adams, Cecil (1990).
On 'Let's Make a Deal,' you pick Door #1. Monty opens Door #2—no prize.
Do you stay with Door #1 or switch to #3?",
The Straight Dope, (November 2, 1990). Retrieved July 25, 2005.
-
Devlin, Keith (July ‐ August 2003).
Devlin's Angle: Monty Hall.
The Mathematical Association of America. http://www.maa.org/devlin/devlin_07_03.html. Retrieved 2008-04-25.
-
Falk, R.(1992).
A closer look at the probabilities of the notorious three prisoners, Cognition, 43, 197-223.
-
Shimojo, S., & Ichikawa, S. (1989).
Intuitive reasoning about probability: Theoretical and experimental analysis of the “problem of three prisoners”. Cognition, 32, 1-24.
-
vos Savant, Marilyn (1990b).
"Ask Marilyn" column, Parade Magazine p. 25 (2 December 1990).
-
vos Savant, Marilyn (1996).
The Power of Logical Thinking. St. Martin's Press. ISBN 0-312-15627-8.
用語解説
-
特定事象による条件付確率あるいは事後確率の問題設定
ホストが「これこれ」のハズレ扉を開けたということを証拠事象として、
「それぞれ」の扉が当たりである条件付き確率を計算する問題設定である。
-
不特定事象による条件付確率あるいは事後確率の問題設定
ホストが「いずれか」のハズレ扉を開けたということを証拠事象として、
「挑戦者が選んだ」扉、あるいは「残りの」扉が当たりである条件付き確率を計算する問題設定である。
-
非条件付確率の問題設定
ホストが「いずれか」のハズレ扉を開けることは最初から分っていることとして
(相場用語なら「織り込み済み」だとして)
「挑戦者が選んだ」扉、あるいは「残りの」扉が当たりである確率を計算する問題設定である。
証拠事象によって標本空間の絞込みを行わない点が、「不特定事象による条件付確率あるいは事後確率の問題設定」との大きな違いである。
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