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2013/12/23 13:14:10
初版 2012/03/10

わかるモンティ・ホール問題    
(わかるモンティホールジレンマ)

おさえておきたいデマ

このページは 2013/03/18 に加筆しました。
2013/06/15 に各とらえ方の表現を修正しました。


モンティ・ホール問題にまつわるさまざまなデマのうち、基本中の基本を取り違えている重大なデマを集めました。

モンティ・ホール問題の由来に関するデマ

モンティ・ホール問題は Monty Hall がホストを務めるTV番組のゲームに関する問題だ

Steve Selvin という統計数学者が Let's Make a Deal というテレビ番組のゲームを見て、モンティ・ホール問題を思いついたのは確かです。 しかし以下にあげる理由から、 「モンティ・ホール問題は実際のテレビ番組の中のゲームに関する問題だ」 と言うとデマになります。

理由1
モンティ・ホール問題のゲームと似たゲームを Monty Hall が行った形跡はあまりない

Let's Make a Deal の放送内容を U-Tube などで見ると、 モンティ・ホール問題の問題文のゲームと、 Let's Make a Deal の実際のゲームとの間に次のような違いがあります。 (私が見た範囲ですが)
比較の着眼点 モンティ・ホール問題の
問題文によくあるゲーム
Let's Make a Deal で
やっていたゲームで
モンティ・ホール問題のゲームに
少しは似ているゲーム
最初に選択枝の範囲を示すか 最初に3つの選択枝を挑戦者に示す。 示さない。
よくあるパターンは、最初に二つのうち一つを挑戦者に選択させ、次にまったく別の選択枝を示して交換するかしないか聞くパターンである。
最初に賞品の内容を示すか 最初に当たりは何で、ハズレは何かをホストから挑戦者に伝える。 箱やカーテンなら開けるまで何が入っているかわからない。
現金なら開けるまで何ドルかわからない。
ハズレの賞品の種類 賞品なし、あるいはヤギなどの冗談賞品で統一されている。 同じ賞品が二つの箱やカーテンに隠れていることはない。
ハズレ=賞品なしか ハズレ=賞品なしというパターンの問題文もある。 こわれたボートなどガラクタのこともあるが、必ず賞品がある。

理由2
モンティ・ホール問題の問題文は Let's Make a Deal のゲームから離れて独自に変化している

1975年に Steve Selvin が作った 「元祖モンティ・ホール問題」 の問題文が色々な人を経由して、 最も有名な Craig F. Whytaker の 「世界的モンティ・ホール問題」 の問題文に至るまでの変化は、 Let's Nake a Deal のゲームに近づくような変化ではなくて、むしろ数学パズルとして洗練する変化であったと感じられます。

理由3
Monty Hall 本人はモンティ・ホール問題のゲームに似たゲームをやったことがあるとは述べていない

1975年に Monty Hall がSteve Selvin に送った手紙や、1991年の New York Times の取材を受けたときの発言内容を読んでも、 Steve Selvin の問題文や Craig F. Whytaker の問題文で描写しているゲームを実際に行ったことがあるのかないのか、はっきりしません。 統計数学の論文誌や新聞で取り上げられると宣伝になるから話を合わせていただけかも知れないし、 自分がどういうゲームをやったか覚えていないのかも知れないし、 ショービジネスの企業秘密だから具体的なことを言えないのかも知れません。

理由4
Monty Hall がモンティ・ホール問題のゲームに似たゲームを行ったことがあったとしても、本質で異なる

Let's Make a Deal にも予算があるので、放送ごとに気前がよくなったり、悪くなったりするはずです。 1975年に Monty Hall がSteve Selvin に送った手紙にも、箱の switch の機会を挑戦者に与えるとは限らないことを匂わせる既述があります。

類似のデマ

モンティ・ホール問題は Monty Hall が司会するクイズ番組に関する問題だ

モンティ・ホール問題は クイズ番組で Monty Hall が出した問題だ

モンティ・ホール問題は Monty Hall というホールで収録されたテレビ番組に関する問題だ

モンティ・ホール問題の心理学に関するデマ

Marilyn vos Savant に反論した人が多かったのは、モンティ・ホール問題の問題文が曖昧だからだ

1990年から1991年にかけて、PARADE誌のコラム "Ask Marilyn" で Marilyn vos Savant の出した「扉を switch した方が2倍有利だ」という答えに 大勢の人が反論した理由の一つに、Craig F. Whitake さんの出した問題文の曖昧さのせいだと述べる文章をときどき見かけます。
しかし以下にあげる理由からまったくのデマです。

理由1
モンティ・ホール問題の問題文の曖昧さを除いても確率を錯覚することが 心理学者の研究で明らかになっている

色々な心理学者が、モンティ・ホール問題の問題文の曖昧さをなくして実験した結果、 「標準仮定」 を明確にしても確率を錯覚する人が減らないことがわかっています。
こういった実験については、 ドナルド・グランバーグ著 「モンティ・ホール・ジレンマ ‐変えるべきか 変えざるべきか‐」 に分かりやすく書かれています。
マリリン・ヴォス・サヴァント著 「気がつかなかった数学の罠 論理思考トレーニング法」 東方雅美訳 中央経済社刊 (2002) の巻末に 付録として載っていて、日本語で読みやすいので、 ぜひ大きな図書館で閲覧して見てください。

理由2
PARADE誌の紙面で反論が公開された読者の半分から自分の誤りを認める手紙が来た

Marilyn vos Savant による "The Game Show Problem" という Web Page にそういったことが書かれています。
このことから、反論した人の多くが 「標準仮定」 を正確に理解していたことがわかります。

モンティ・ホール問題の数学に関するデマ

挑戦者が選んだ扉が当りのときにホストが開ける扉に偏りがあるとき、
ホストが開け残した扉が当りである確率は 2 / 3 とはならないので、
Marylin vos Savant の答えは不完全である

Marilyn vos Savant は ホストがいずれかのハズレの扉を開けることは最初から決まっていることだとして、 switch すると当たる確率を求めようとするとらえ方 で問題をとらえているので、扉を switch して当りになる確率は常に 2 / 3 になります。
ところが、 ホストが開けた扉を特定して、 残った二つの扉それぞれが当たりである確率を求めようとするとらえ方 で問題をとらえた場合、ホストが開ける扉に偏りがあると、扉を switch して当りになる確率が 2 / 3 になりません。
このことを取り沙汰して、Marilyn vos Savant の答えは不完全だと言う人がいます。
しかし以下にあげる理由からまったくのデマです。

理由
モンティ・ホール問題をホストが開けた扉を特定して、 残った二つの扉それぞれが当たりである確率を求めようとするとらえ方でとらえる必然性はない

少なくとも数学の確率論の範疇では、  ホストがいずれかのハズレの扉を開けることは最初から決まっていることだとして、 switch すると当たる確率を求めようとするとらえ方 と、  ホストが開けた扉を特定して、 残った二つの扉それぞれが当たりである確率を求めようとするとらえ方  を比較して精度の違いを論じることはできても、どちらが正当かを論じることはできません。

この問題については、高校生にもわかるモンティ・ホール問題 でも論じています。

モンティ・ホール問題を解く人に関するデマ

モンティ・ホール問題のゲームの中でホストが挑戦者にルールを 説明したかで答えが変わる

次のことから、モンティ・ホール問題のゲームの中で ホストが挑戦者にルールを説明しかたどうかで答えが変わるという 説が言い過ぎであることがわかります。
モンティ・ホール問題のたいがいの問題文に 「標準仮定」 に 関する曖昧さがあることが関係していそうです。
標準仮定の曖昧さが気になる人の中から、 ホストが挑戦者にルールを説明したか気になる人が出てくるのでしょう。


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